ベランダから満月を見ていると白いものがちらほら……雪だ! 首に
マフラーをぐるぐる巻いて「えいやぁ!」と玄関を飛び出した。夜の
雪は見慣れた景色さえもどこか幻想的に変えるから、見ておかなけれ
ば後悔しそうで。
仕事が煮詰まったとき、気分転換に歩くいつもの散歩コースを1時間
ほど歩いた。 時おり空を見上げると、ぼんやりとベールを被ったよう
に滲んだ月。その月が照らす小宇宙をふわふわと舞う雪が惑星のよう
にも見えて……。
積もるほどは降らなかったけど、黒い車のボンネットにはこれまた銀
河のような雪模様。既に営業時間が終わり静まり返るミニクーパーの
ディーラーのネオンは、ふわふわと浮遊している宇宙ステーションの
ようにも見えた。
雪のよう、星のよう。舞っているかのよう、漂っているかのよう。冷
たいよう、暖かいよう。西日本の平地に住んでいても、こうして年に
一度ぐらいは雪を見るのもいいものだと、黒い夜空を見上げながら両
手を息で温めた。


