パシャ、パシャ
「おめでとうございます。」
「ノーベル科学賞、受賞おめでとうございます。記者会見場で記者達が次々に祝いの言葉をかける。
「ありがとうございます。自分でもまだ信じられなくて…」
「この技術をどのように使いたいですか?」
「平和利用です。この技術を使い世界を平和にしたいですね。」
「平和ですか。一方でこの技術は大変軍事にも有効と聞いております。その辺はいかがですか?」
…最近のマスコミは、本当に失礼だ、祝賀ムードに水をさすよな…
…こっちは、芸能人ではなく記者会見なれしてないんだから失礼な質問には、直ぐに顔にでてしまうよ。また、その一瞬のふてくされた顔を狙ってるんだよなぁ〜…
「そうならないようにします」
「そうならないって、本当にできるの?」
…自分の不理解を棚に上げた安い質問だなー…
半分顔が引きつってるのが分かったが、どうすることもできず。
そのまま公けに流れてしまった。
「がんばります」
「正直に包み隠さず話してくださいよ、軍事転用もあるんでしょ?」
「それは...」
「ほら〜、言葉に詰まってるじゃない」
...いろいろタイミングがあるんだよ!正直に答えたら水の泡になるんだよ!くそ〜答えないと突っ込んでくるし...
「とにかく、平和利用なんです。」
「それじゃ、回答になっ」
「はい、ではこの辺で、先生もお疲れのようですので、会見は打ち切らせていただきます」
…ナイス司会...
会見が終わり帰路につくタクシーの中で
…それにしても、祝賀ムード一色かと思ったら3割ぐらいが、失礼な質問だったなぁ〜
正直に答えてくださいって、昔話じゃないんだから、正直がなんでもハッピーになるわけじゃないんだよ、黙ってタイミング見ることも必要なんだよ〜
そもそも軍事目的にも使えるが、受賞した本人が平和利用に使うと言ってるのに、なぜ疑うかね〜、自慢するわけじゃないけど権威あるノーベル賞を取った私の言葉と記者の猜疑心どちらを信じるんだね。と言ってやりたかったなー
内容を深く理解もせず安く偏屈な質問をしやがって、そして、まーた国民はそれを鵜呑みにして、更に尾鰭尾頭付で広めるんだよなー
あ、尾が二回もついた。ははははー…
「お客さん!お客さん!着きましたよ」
「あー、すみません」…空想で愚痴ってしまった…
戸建の住宅街にタクシーは到着した。
「ただいま〜」
「パパ、おかえりー」奥から3歳の娘が走り寄ってきてジャンプして抱きついてきた。
それを丸男はいいタイミングで抱き上げた
「はーい帰ってきましたよ〜」娘のほほにほほをすり寄せた。
「おめでとうございます。今日は、会見の後祝賀会じゃなかったの」妻が奥から出てきて言った。
「記者の質問にムッときちゃって、まずい酒になると思ってさ、体調不良と言って無理を言って延期してもらったよ」
「あら、そう〜、それにしても〜失礼よね〜」
「先生、是非我が社で!大学の研究所から我が社の研究所へ移って研究を続けていただけませんか!我が社は潤沢に資金があり、必要なだけお金を使ってかまいません。」
…そうだな〜研究が大幅に進むし、何よりこの会社でないと最終的に平和は達成できないからな…
「いいでしょう!移らさせていただきます。よろしくお願いします。」
次の日、新聞に"山田教授、中島精密重工の研究所所長に就任!やはり軍事転用か!"
丸男は、朝、食卓で新聞を広げ記事を見ながら、…やっすいなー「軍事転用か!」だって、あーやっすい内容だー…
その時、丸男はただただ記事に落胆するばかりで、その後、その記述が自分にどう降りかかってくるかは、想像していなかった。いつもの新聞を読んで、記事に一喜一憂しているのとなんら変わらない状態であった。
「じゃー行ってくるね」
奥で、娘の弁当を作っている妻に声をかけた。
玄関で靴ベラを靴に入れ右足、左足と履きながら
…ほんと理解してない癖に勝手に憶測で記事をかくよなー語尾に"か?"つけたら何書いても言い訳じゃないで、国民は"か?"が着いても誘導されるもんなんやで〜ほんまに…
...あ、関西弁で愚痴ってもうたがなぁ...
ガチャっと玄関を開けた
パシャパシャパシャパシャパシャパシャ
一瞬、丸男はたじろぎ、あまりの眩しさから手の甲で目をかばった。
パシャパシャパシャパシャ
それでもフラッシュは鳴り止まない。
フラッシュの向こう側から、「やはり軍事目的だったんですね!私の疑った通りじゃないですか」
…あ、あの浅い記者だ…
「お金ですか?ノーベル賞もらったのに恥ずかしくないですか」
丸男は、特に悪いことをしたわけではないので、どうどうとしていれば良かったのだが、あまりのフラッシュとほぼ100パーの不理解の質問にしかも近所に迷惑になると思い、何も答えず急いで、待たせているタクシーに乗った。
「ちょ!ちょっと山田教授!山田さーん答えてくださいよ!」
それが我々人生が歪められ卑屈に生きなけれいけない始まりであった
毎朝、毎朝、
毎晩、家に帰るたびに繰り広げられる市民団体、労働団体からの核兵器反対!戦争反対!のシュプレヒコール!どさくさに紛れた罵声!心無い言葉の嵐!
家族は深く傷つき人との関わりを避けるようになった。
4度目の引っ越しから数日が経ち
ある平日の夕方
「お父さん、死神ってなぁに?」
「え!?」
「学校で、「おまえのおやじは死神だ!金に目が眩んだ死神だ!」て言われたの」
丸男は娘を抱き寄せ「ごめんよー辛い思いをさせて」丸男はなきながら絞り出すように「もうすぐ、もうすぐだから」
…よし!完成だ!パーフェクトだ!でも、まだ、口が裂けても公けにはできない…
数日後、武器商談会のブースでプレゼンをした。
「このミサイルは、攻撃を避けるため大気圏を周回した後目的にまっしぐらに向かって行くもので、大気圏突入後も攻撃回避行動を取るため必ず着弾します。」丸男は力強く説明した、
「おー!素晴らしい!我が国に是非!」
「我が国も採用するぞ!」
パチ、パチパチパチワァーー
拍手喝采が鳴り響いた。
「死神!なんてものを作ったんだ!」
拍手の遠くから怒号とともに走って向かってくる。市民らしき人が飛んできた。
「君!待ちたまえ!」即座に警備員に取り抑えられた。
「おまえたちは、死神に加担するのか!家族や友人が死ぬんだぞ!
ノーベル賞受賞者として恥ずかしくないのか!恥を知れ!」抑えられながらも市民は叫び続けた。警備員も抑えつけながらも、チラっとこっちを見た
その一瞬の顔は"ほんとになんてものを作ったんだ"と言わんばかりの表情であった。市民は脇に抱えられ会場の外に連れだされた。
社長が「素晴らしい!ようやく完成したね!これで我が社のミサイルは、一番売れること間違いなしだ!ありとあらゆる 攻撃をかわし必ず目標に着弾させる、Kセンサーミサイル、素晴らしい!売れるぞー!」
この社長の言葉通りバンバン売れた
どのような技術を使っても撃ち落とすことができないミサイルに核を搭載すればもう完璧で、各国はどんどん古い核ミサイルを廃棄し更新を進めて行った。
数年後シェア100パーとなった。
全ての!潜水艦にも空母にも地上にも全ての核ミサイルが搭載できる箇所全てが置き換わった。その量は地球を何度も何度も破壊できる量であった。
岡田記者...この100パー置きかわることが、平和利用なのか?核の抑止力で平和だと!
持っていない国まで、持つようになり、より危険な危なっかしい抑止力が広がっただけではないか!くそ!...
それから数年間
新聞記事には、罵倒の嵐が吹きあれているが、会社がマスコミの執拗な攻撃を見かね研究所内に家と家庭教師を用意してからは、直接罵倒されることもなくなり、落ち着いて暮らしていた。
娘や妻はテレビを見なくなり大分落ち着きをとり戻していた
ただ、世界は逆であった
資源は枯渇し各国が疑心暗鬼になり、ミサイルボタンに手がかかった一触即発の状態であった。