時代は移り、2021年。
私は大学病院を辞め、実家の小児科クリニックを継いでいた。
左膝の腫瘤は、10~15cmほどの大きさで、4年前にできた頃と比べて大きくも小さくもなっていない印象だったので、放置していた。
2021年1月、正月太りを解消したく、自宅で「リングフィットアドベンチャー」をやっていた。
スクワットや、専用リングを太ももに挟んで力を入れるエクササイズがあった。
これがいけなかったのであろう、数日後、左膝の腫瘤が急激に大きくなってしまった。痛みはなかった。
その時は、「また『血腫』が大きくなったのか」くらいにしか思っていなかったが、あまりに腫れていたので、地元の総合病院の整形外科(4年前とは別の病院)を受診した。
医師に今までの経緯を説明して左膝を見せると、「血腫ではなく、軟部腫瘍の可能性がある」とのことであった。
私は、そうですかと答えたが、内心は腫瘍だとは思っていなかった。
すぐに膝のMRIを撮って頂き、その結果は「良性か悪性かは分からないがやはり軟部腫瘍の可能性があるので、県立がんセンターに紹介状を書きます」ということであった。
この後に及んで私は、恥ずかしながら、医師であるにも関わらず、「まさか本当に腫瘍ではないだろう。4年前に診てもらった時は血腫という診断だったから、今回も血腫が大きくなっただけだろう」という考えを捨てきれていなかった。
がんセンターに行った後のことは、次回記載する。
<のちに勉強して分かったこと>
・「軟部腫瘍」は、軟部組織(筋肉、脂肪、血管、神経などの総称)にできる腫瘍のことで、良性のものと、悪性のものと、その中間のものがある。
・良性か悪性かは、病理検査をしないと判断できない。
(病理検査:腫瘍の一部を切開または針で採取して、顕微鏡で観察すること。それぞれ一長一短があるが、切開生検の方が直接腫瘍を観察して採取することができ、針生検よりも確実な診断方法です。)
・悪性軟部腫瘍は、太ももにできることが多い。悪性でも通常は痛みや痺れなどの症状がなく、発見が遅れることがある。
(まさに私です。)
・悪性軟部腫瘍は、病理検査でさらに細かく分類され、タイプによって悪性度が異なる。
・悪性軟部腫瘍は、がん全体の1.5%ほどと比較的珍しく、「希少がん」と呼ばれる。
・珍しいので一般の整形外科医には診断ができないことがあり、軟部腫瘍が考えられる場合は、整形外科医の中でも腫瘍を専門とする医師に診てもらうことが望ましい。
(私も医者の端くれでありながら、そういう腫瘍があることを知りませんでした。大学病院などの大きい病院でも、腫瘍専門の整形外科医がいない場合があります。がんセンターなど腫瘍専門の病院であれば確実に診てもらえると思います。)
・悪性軟部腫瘍の中でも、急激に大きくなるものと数年単位でゆっくり大きくなるものがあり、悪性度によって症状や進行速度には幅がある。腫瘍から出血すると、急激に大きくなることがある。
→私と同じように、体のどこかに原因不明の腫瘤(コブ)ができた方は、まずは早めに整形外科の開業医さんで診てもらい、必要があれば腫瘍専門の整形外科医に紹介してもらうことをお勧めします。
参考文献:軟部腫瘍診療ガイドライン2020. 日本整形外科学会監修