ブタとコンピュータ。大岡山『あたりや』(トンカツ・中華/東急目黒線・大井町線) | ご近所の魔境《ここは店主さんの王国》

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料理のサンプルが並ぶ飲食店のウィンドウ。そこはサンプル以外に人形ガラクタ、店主さんの自慢のコレクション。時には理解しがたいものが飾られている。あなたの近所にもあるかもしれない、店主さんの王国をご紹介しよう。

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     とんかつ770円、カツ丼770円。ふーむ、安い。
     いまどき、めずらしい値段だ。感心、感心なのであるが、
     このショーケースにはサンプルがない。
     とんかつとカツ丼の値段がプリントされたボードが片隅に、ごく控えめに
     置かれているだけ。あとは御覧のとおり。
     ソーラー仕掛けで常に動き続けるフラワー、リンゴ、招き猫、イルカなどなどが
     しつこいくらい沢山並べられている。

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     ユラユラと動き続けるソーラー人形たちの後ろに、ちっちゃな豚のフィギュア。
     何匹も並んでいる。そうだ、ここはとんかつ屋だから、ブタとは
     切っても切れない関係にある。でも、いくら小さなフィギュアといえども
     その姿はあまりにもリアル。

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     ソーラー人形の後ろに隠れる豚フィギュアたち。
     その姿は今にも突進してきそうで、どう猛さを感じる。
     よくみればフィギュアの中には子ブタもいる。
     そのブタたちと関係なくユラユラと揺れる人形たち。
     豚とユラユラ、変なショーケースだぞ。

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     ブタとユーラユラ、このショーケースの謎。
     その答はショーケースの片すみ、値段のボードの反対側に目をやると、簡単に
     見えてくる。ここはブタの牧場、手作りのジオラマなのだ。
     谷川らしき水の流れがあり、岩山や牧場のサイロみたいなものを背景に
     緑の芝が広がる。そしてブタなのだ。その広いスペースをうめるように
     何かのきっかけでソーラー人形がふえだして、主役の座をブタたちから
     奪い取ってしまったのが今の、このショーケースなのだ。

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     牧場の片すみでブランコ遊びをするお猿のソーラー人形。
     今ではこのお猿のほうが、牧場の主役かもしれない。
     動かない小さい豚のフィギュアと比べて、お猿はでっかいしブランコ漕ぎ続けて
     いるから、どうしてもうるさいくらい目立ってしまうのだ。

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      ソーラー仕掛けのお猿だから、今日も明日も仕掛けが
      壊れるまで楽しそうにブランコを漕ぎ続ける。

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  とんかつ・中華の『あたりや』は東工大の正門から歩いて4・5分。
  先代が中華の店として開店したので、その名残としてラーメンや
  ワンタンなど中華のメニューも残されている。
  今はソーラー人形の陳列ケースと化したショーケースだが、
  以前は手作りジオラマの中に和風のあずまやなどが飾られていたらしい。
  お店の入り口わきに、窓を兼ねて出窓風にあつらえられたショーケースは
  窓枠を何度も塗りなおした跡があり、経年の風格がうかがえる。
  出窓にソーラー人形を飾るのは、ショーケースの寂しさを
  少しでも変化させたいゆえなのか。でも、ここまで並べられると
  絶対に店主さんの趣味コレクションだと理解してしまうのだ。


イメージ 7  とんかつ・中華『あたりや』はNHKのTV番組
  『プロジェクトXで』紹介されてことがある。
  日本のコンピュータの礎を築いた
  池田敏夫(富士通・東工大卒)という研究者が
  会社の外のプロジェクトルームとして、
  ここの奥座を多用していた。
  とんかつライスを食べながら、
  コンピュータ開発の想を錬った記念すべき
  場所として紹介されたのだ。
  勿論その時は彼らが食したお店名物の
  とんかつライスも紹介されたという。
  その縁と値段で、奥の座敷を利用する
  東工大関係者は、今も多いらしい。