菜摘ひかる 著、『えっち主義』を読みました。
角川文庫です。











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今回の本のお供には、ダイソーさんで百円で買ってきた、和風のぬいぐるみです。
この子は犬張り子です。
可愛いでしょう?
この和風シリーズのぬいぐるみがダイソーさんで売り出されてすぐに、シリーズ全部コンプ買いしました!
お気に入りでーす!








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本書はエッセイ集です。

エッセイ集…となると、著者がどういう人なのかが、まずは気になると思います。
やはりエッセイは著者の考え方や為人が思い切り前面に出てくるものとなるので、どうせなら魅力的な人や面白い人が書いたものを読みたいですものね。


本書の著者は、

『●菜摘ひかる(なつみ ひかる)
ヘルス、SMなどあらゆる風俗業界を渡り歩く。現在はライター兼漫画家。主な著者に『菜摘ひかるの私はカメになりたい』(角川文庫)、『恋は肉色』『風俗嬢菜摘ひかるの性的冒険』(光文社知恵の森文庫)、『依存姫』(主婦と生活社)などがある。』
(カバー袖より)

このような方で。
そして、2002年の11月に29歳の若さですでに亡くなっておられます。




その生い立ちはWikipediaの菜摘ひかるの項によって知ることができます。

現役の風俗嬢として、性風俗業界の内側から業界内部の情報をエッセイや漫画で描いていた人のようです。

本書『えっち主義』のあとがきに、2002年の夏、という記述が見られますので。
この本は菜摘ひかるの晩年のエッセイ集ということになります。
晩年というにはあまりに若いですけれども。





本書の中身は性風俗業界や男女の性に関わるエッセイと、それにプラスして挿絵的にページの下の方には著者本人が描いた漫画が載っています。
それから、巻末にも4コマ漫画と短編漫画がオマケで付いています。

『嫌いな客はバカな客ーーー。
イメクラ、ホテトル、ソープとあらゆる風俗を渡り歩き、様々な男の本質を見続けてきた菜摘ひかるだからこそ放てる言葉の爆弾。それは、たった一言で夢見がちな世の男どもをあっさりと身も蓋もない気持ちにさせてしまう痛快エッセイ。
毒舌それとも単なる皮肉⁉︎心底笑えるあなたは、オトナです。
ちょっとえっちなコミック付き』
(表紙裏・解説より)






エッセイや漫画自体は、とても面白いです。

業界内部の人が書いた性風俗業界の暴露話みたいな内容も多いですから、「なるほどー!こーなってるのかー。」なんて、興味津々で読んでしまいます。
ただちょっと、男性にとっては、夢を壊されちゃうような内容でもある気がしますけど。

それなりの対価を得ることができるお仕事ですから仕方ないのかもしれませんが、大変なことも多いようですね。

特に気になったのが、いくら性風俗産業とはいえセクハラがあまりに横行しすぎているのではないかという点です。
このエッセイ自体もう10年以上前に書かれたものですから、今はどうなっているのかわかりませんけれど、改善されていたらいいなぁと思います。

そのほか、著者自身の経験をもとに、セックスや男性についての数ページの短いエッセイがたくさん載ってます。
歯に絹着せぬ感じの露骨な表現で、あけすけにズバズバと、しかしとても読みやすい文章で書かれていて、引き込まれます。
まあ、エロ話は面白いものですからね。


エッセイは全体的に明るい調子で、力強い文体で書かれていますが。
ちょっと陳腐な言い方ですが、文章のそこここに著者の「闇」を感じさせるような部分が顔をのぞかせています。
傷だらけの自分を守るために、無理して強がっているような痛々しさを、きっとこの本を読む人は誰でも感じ取ってしまうんじゃないでしょうか。


例えば、

『私の価値はセックス、それだけしかない。』
『あなたの文章に惚れてるとか、君の人柄が好きなんだとかいわれた日には、私はそんなにつまらない存在なのかと、居たたまれなさにどうしようもなくなって泣き崩れてしまいそうになる。』

なんて、愛を突っぱねるようなことを書いてあるかと思えば、

『好きな人には必ず本気になってもらえないというのは、惚れてくる客の真心を利用して金を引っ張ってる報いかもしれない。』

と、今度は愛を求めるようなことを書いてあります。
とても不安定です。
そもそも、考え方がちょっと偏りすぎていて、健全ではありません。



著者本人は自分を分析して。
幼い頃に父親に必要とされていないと思ってしまったことを原因に据えて、父に愛されたかった想いを、不特定多数の客である男性たちからの性的欲望を自分に集めることで埋め合わせようとした…ような感じに説明しています。
『ほんとは、ただひとりの男に愛されたかっただけなんだよね。あのパンチパーマのくそ親父に。』








著者はこのエッセイの連載が始まった当時は池袋の性風俗店で働いていたそうですが。
連載中に風俗嬢をやめて、物書き一本で暮らしていくようになったそうです。

著者曰くは『わたしの心の深い部分に、予想より早く限界が来た』そうで、ある時からどうしても風俗の仕事ができなくなってしまったそうです。

この著者、きっと根本的な部分でとても真面目な人なんだと思います。
風俗嬢ではなくなったことを隠さずにエッセイの中にしっかりと書いています。

そして、

『風俗ネタ、もしくはそれと被るエロネタから離れられないのだ。自分からしがみついているともいえるし、現実問題、依頼された仕事で要求されるのが判で押したようにそればかりというのと、事情は両方だ。』
『このまま同じ場所でダラダラとやっていたら先は見えていると思った。風俗嬢だった自分の幻影にいつまでもしがみついて、細々とネタを切り売りする姿はみっともないと思った。』

と自分の立ち位置を考えて、これからはあえて狙ったり意地を張って避けたりはせず、でも風俗だけに固執するのはやめようと思う、と未来への展望を書いています。

本書に載っているエッセイを読む限り、読みやすい文章を書ける文才のある方ですし。
元風俗嬢という特殊な職業の経験者であり、エロ方面に強いという特徴もありますし。
もしもこの後すぐに夭逝することがなかったなら、ライターとして、風俗の縛りを乗り越えて、まだまだ面白いものが書けたんじゃないかな?と思います。

でも悩んでいたでしょうね。
現役風俗嬢ライターとして売れてしまった以上、肩書きから風俗嬢が消えることに、不安を感じないわけがありません。

側から見ていれば、彼女はもうこの時点で、ライターとして文才を認められてたくさんの本を出版することができていて。
すでに、ひとかどの人物でありますけれど。
普通の人が持たない素晴らしいものを手に入れた、恵まれた人に見えますけど。
本人にとってはそれだけでは、自分が何者かであるという自信には繋がらないのでしょう。








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ところで、私がなんでこの著者のエッセイ集を読んだかと言いますと。
実は、著者が夭逝した人だったからなのです。

少し前にも、やはり文才があり将来も楽しみだったのに若くして死んでしまった方、南条あやの本を読みました。


そのつながりで、菜摘ひかるの本も読みたくて。

本当は彼女の書いたフィクションの『依存姫』というのが読みたかったんですが、絶版のため微妙に価格が上がっています。
貧乏でケチな私がそれを買おうかどうしようか考えていた時に、近所のブックオフさんの百円コーナーで菜摘ひかるの本を発見しましたので。
とりあえずこれを読んでみるかと、購入して読んだわけなのであります。






死を美化して、褒め称えたりするつもりはありませんが。
気にはなります。
どうしてなんだろう?
どんな人だったんだろう?
何を望んでいたんだろう?
何に耐えていたんだろう?
…要するに、若くして死んだ人にやたら興味が湧いてしまうのです。
惹かれてしまうのです。

死者たちの著作を読んだところで、実際のところが分かるわけはないでしょうけれど。
それでも知りたくなるのです。
死とは、そして生きるとはどういうことか?
何らかのヒントが得られるのではないかと、読んでしまうのです。

































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しかし自分の友人達には、やたらNY居住経験者が多いです。
世界的な大都市ですものね。

やっぱり憧れるなー。