林公一 著、『こころと脳の相談室名作選集 家の中にストーカーがいますーーー “こころの風邪”などありません、それは“脳の病気”です』を読みました。
impress QuickBooksの電子書籍です、Kindleアプリで読みました。











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私は読書感想文を書くときは、いつも本と一緒に「本のお供」として小物を写した写真を載せていたのですが。

今回は電子書籍なので、タイトル画像だけです。

ちょっとさみしい…








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Dr林のこころと脳の相談室という、精神科医の林公一(HN)が運営するネット上で有名なサイトがあります。
このサイトの売り物ともいうべきメインコンテンツは『精神科Q&A』です。
全国から寄せられた精神に関する質問のメールに、サイト管理者の精神科医Dr林が答えるコーナーです。




本書はその『精神科Q&A』から読み応えのあるものをピックアップし、さらに電子書籍化にあたって『あとからひとこと』ということで、より詳しい精神科医としての見解を著者が付け加えたものになっております。





ところで『Dr林のこころと脳の相談室』というサイトのQ&Aは、医療相談ではなく、相談者の質問に林公一医師が事実を答えるだけのコーナーです。


そのことは本書のまえがきでも、

『精神科Q&Aいうタイトルだが、医療相談ではない。事実を伝える Q&Aである。明るい事実もある。暗い事実もある。希望にあふれた事実もある。絶望しかもたらさない事実もある。そんな現実の中 、医療相談は明るい希望だけを伝えるものである。つまりそれは事実ではない。精神科 Q&Aは医療相談ではないから、事実だけを伝える。光か闇か、希望か絶望か、そういうことは意に介さず、事実だけを伝える。』

と、はっきり明記されています。



著者がこの様に明言しているだけあって、林医師の解答はものすごいバッサリ!です。

もちろん、寄せられた質問自体には精神科医としてとても丁寧に答えています。
しかし、必要があれば長い文章でわかりやすく説明もしますけれども、必要がなければたった数行の解答でバッサリおしまいです。


質問者に対して、医療機関で治療を受けることを勧めたりはしますが、具体的な治療相談などには一切乗りません。


この、余計なことを書かない、快刀乱麻を断つ勢いで本質だけを一言で答えてしまうスタイルが人気を呼び、『Dr林のこころと脳の相談室』は人気サイトになったようです。



ところで、そのサイトを電子書籍にして読みやすくまとめるにあたって、著者が『精神科Q&A』から引用した本書の第1番目の質問は、
『【 2 2 4 4 】興味本位はダメですか ?』
という質問でした。

質問者は、特に自分や家族が悩んでいるわけでもないのに、ただなんとなく興味があるだけで、精神疾患について知ろうとすることはよいことなのか?それとも実際の精神病患者やそれに関係する人達にとってそういった態度は失礼なことなのか?を著者に質問しています。

『精神科Q&A』は『精神に関係したことなら、どんな質問もOK』なので、このように、直接に病気に関係ない質問もたくさん寄せられています。

さて、この質問に対する著者の解答ですが。

『興味本位は無関心に優ります。私のサイトも出版物も、根底にはその考え方があります。興味本位で読んでいる人が少なからずいらっしゃることは十分に承知しています。興味本位は無関心に優ります。』

とのことです。
興味本位は無関心に優ると、二回も書いてあります。
この態度は、とても大事なことなのですね。

精神疾患は難しい問題ですけれど。
自分には関係ないからと無関心でいたり、よくわからないからと敬遠したり、なんとなく不謹慎な感じがするから触らぬ神に祟りなし的に触れずにいようとするよりは、まずは興味本位でも精神疾患というのが一体どういうものなのか知ることが大切だというのは、確かだと思います。

人間、知らないことって、なんだか不安になるし、やたら怖いような気がしてしまうもんですし。
知らないと、どう対応していいかすらわかりませんものね。




私自身の体験としましても、知っておくことは大切だなと思ったことが過去にあります。

ある私の友人がずいぶん前に双極性障害を発症したのですが、当時の私はそういったことに知識がなくて、その話を友人から聞いてもあまりピンとこなくて。
よくわからないけど大変なんだねということで、そのまま気にせず友達付き合いを続けていました。
友人と遊ぶのは友人が躁状態の時が多くて、だから、その躁の姿を友人の普段の姿として捉えていましたし。
私もかなりマイペースなタイプなので、躁状態のパワフルな友人に振り回されることもなかったし…そういう性格の人だと思って付き合っていました。
特になんの問題もなく。

でも数年後に事件というか、ちょっとした出来事が起こりました。
私が言った覚えの無いことや、した覚えのないことで、突然友人にものすごく責められたのです。
私はすごくびっくりしました、正直まったく身に覚えがなかったので。

その時はおかしいと思いつつも、それまでごく普通に友達付き合いをしていたつもりの友人がそんなに怒るのだから、私が誤解を招くような悪いことを知らず知らずのうちにしてしまってたのかも?とも思いまして。
友人とやりとりした昔のメールなども読み返して、私の悪いところを探したんです。
が、確認すればするほど、どう考えても友人の言っていることがおかしいんです。

訳が分からなくて、一瞬、こちらがパニックに陥りそうになりました。
が、この時になって、やっと思い出したんです。
そういえば、友人は双極性障害だったんだということを。

そこでネット検索して、双極性障害の症状を読んでみて、被害妄想の文字を見つけ、納得がいきました。
この症状のために友人はあんなことを言ってきたんだろうな…と。
そして、さらに説明を読んでいると、こういう妄想を肯定したり否定したりすることはよくないと書かれていました、このような時は、話をそらしてしまうのがいいそうです。

私、知らなかったので、友人の発言にいちいち真面目に答えてしまいました…あげくに、そこまで怒るならよく分からないけど自分が悪いのかな?と思って謝ってしまいました…これは被害妄想を肯定してしまったことになるのでは?

知っていたら、あの時に自分が焦ったりパニクったりすることもなかっただろうし、友人に対してももっと良い対応が取れたかもしれません。

それに、そのほかの付き合い方のことにしたって、友人の病気がどういったものなのか少しでも知っていれば、もう少し友人について理解できたのではないか?とも、この時には考えました。








閑話休題、話を読書感想に戻します。

…『興味本位は無関心に優る』と、著者は質問者に答えています。
そして、『あとからひとこと』で、さらに、

『興味本位の人、精神科の勉強をしたい人、勉強まではしたくないがちょっとのぞいて見たい人、精神科が好きな人、精神科が嫌いな人、通りすがりの人。精神科 Q&Aはそういう人たちのための読み物です。』

とも書いてくれております。
ですから安心して、興味本位で読みましょう。
読み物として、本書や、元のサイトは、とても面白く興味深いものです。
まずは、どんなきっかけであれ、知らなくてはいけないのです。
無知を単に罪とまでは言いたくないですが、やはり知っているに越したことはないのですから。





さて、本書に対して取る態度をまず第1番目のQ&Aで示した後は、著者は読者の興味をそそるQ&Aをたくさんピックアップしてくれています。

精神に関することならなんでもOKということで、質問の幅もかなり幅広いです。
状態が落ち着いている鬱病や統合失調症の患者さんや家族の方などからの論理立ったしっかりとした質問もあれば、状態の良くない患者さんからの支離滅裂な文章の質問もあります。

中にはただ失恋して落ち込んでるだけの人からの質問に、著者が、
『これは失恋です。失恋を医師に相談するのは間違っています。自分で解決してください。』
などとバッサリ切って捨てているものもあって、思わず笑ってしまいそうなQ&Aもあります。

取り上げられている質問は多種多様で、鬱病、統合失調症、双極性障害、擬態うつ病、依存症、人格障害…などなど、に関するものが幅広くピックアップされています。
それにプラスして、失恋や精神疾患を装った偽質問など、脱力してしまうような質問も少し、スパイスとして取り上げられています。

同じ人からの質問を連続して載せてくれている場所もあって、そういうところでは、状態の悪かった患者さんがだんだん回復していく様を見られてホッとします。
そしてその回復の様子を著者も喜んでいるのが解答から伝わってきて、普段は冷たく見えるくらいのバッサリ切り捨て解答を連発するDr林の、隠されたあたたかな人間味がチラリと見えちゃうところもいいです。





本書の表題である『家の中にストーカーがいます』のタイトルの質問では。

質問者曰く、
38歳になるのに定職につかずいつも家にいる弟が、姉である自分に嫌がらせなどの異常行動をしてくる。
これは、弟が統合失調症などの精神病だからではないだろうか?
とのことです。

この一見、家族の行動に困って質問を持ちかけてきたように見える質問者ですが、実は…



この後、ちょっとしたショートミステリのような、信じられない意外な展開が待ち受けているのです。

このお話の続きが気になる方は、Dr林のこころと脳の相談室←リンク先サイトの『精神科Q&A』内にある[1087]番の質問を探してみてください。





『興味本位は無関心に優る』です。
この他にもたくさんの面白い質問や、胸が苦しくなるような質問、ユニークな質問、びっくりするような質問など、読み応えのあるものがありますので。
興味を持たれた方は、サイト内を適当に読んで回るのも楽しいと思います。


そして、特に面白いQ&Aを読みたいと思う方は、本書をダウンロードしてみてはいかがでしょうか?

ちなみに本書はkindle unlimited に入ってますから、読み放題を利用できる方は購入せずに読めますよ。
























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1868年白虎隊が飯盛山で自刃した日。白虎隊って知ってる?

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実は私、日本史はよくわからなくて。
特に幕末あたりはサッパリです。

なので、良い機会なのでWikipediaの白虎隊のページを読んできました。

若いというか…むしろ幼いくらいの子供達が自刃する悲劇的な事件だったんですね。