金原ひとみ著、『蛇にピアス』を読みました。
集英社文庫です。
第130回の芥川賞受賞作です。
映画化もされたようですね。
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今回の本のお供は、ダイソーさんで買ってきたペンギンのぬいぐるみです。
とっても可愛いのでお気に入り、だったんですが。
うちの猫族までこれを気に入ってしまいまして。
このペンギンちゃん、今では私のオモチャではなく、猫ちゃんたちのオモチャになっちゃってます。
ちと残念ですが。
猫とペンギンのぬいぐるみが一緒に眠っているところはとても可愛いので…ま、いいか。
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内容はセンセーショナルです。
スプリット・タン、ボディ・ピアス、タトゥー…身体改造と呼ばれるような、過激なファッション。
セックスと暴力と死とアルコール。
そういうものを道具立てに使った、女の子1人と男の子2人の三角関係のお話です、荒っぽくまとめると。
以下、あらすじです。
主人公はルイという女の子。
まだ未成年です。
割と普通な家庭で特に問題なく育った、それなりの教養のある、ちょっとギャルっぽい女の子…みたいですね。
このルイが、舌にスプリット・タンと呼ばれる加工(舌先に縦に切り込みを入れて、蛇の舌みたいに見えるようにする身体改造)を施し、タトゥーを入れた赤い髪の男の子アマと出会うところからお話は始まります。
アマのスプリット・タンに魅了されたルイは、出会ったその日に彼と肉体関係を結び…というか、ヤっちゃってって表現した方が良さそうだな。
そう、いきなりヤっちゃって、そのままアマの家に転がり込んで同棲を始めてしまいます。
アマのように自分も舌を加工したい、タトゥーも入れたい、ってことで、ルイはアマに連れられて、そういった身体改造をしてくれるお店に行きます。
そこで、シバという全身ピアスにタトゥーだらけのサディストの彫り師に紹介されて、舌にピアスを開けてもらいます。
このピアスの穴を大きくしていって、最後には切り裂いて、スプリット・タンに加工するのです。
ルイはアマと同棲しつつも、内緒でシバとSMプレイをします。
浮気です。
ルイはマゾヒストなのです。
ある日、新宿で、ルイにちょっかいをかけてきた暴力団員の男にアマがキレて、ボコボコに殴ってしまいます。
アマは普段はその外見に似合わず、甘えん坊でおとなしい男の子なんですが、キレると止まらなくなるタイプだったのです。
警察がやって来る前に、ルイもアマもうまいことその場から逃げることができましたが。
アマは、ルイへの愛の証として、その暴力団員の歯を二本折り取ってルイにプレゼントします。
その後、たまたま読んだ新聞で、赤い髪の男に殴り殺された暴力団所属の男性の記事を読んでしまったルイは。
記事の内容はアマに喋らず、ただアマの赤い髪を灰色に染め替えさせて。
自分に向かって、この記事はアマのことではないと言い聞かせ、現実逃避します。
ルイは舌のピアスの穴を広げたり、タトゥーを彫ったりして身体改造をすすめますが。
身体を改造したら何かが変わるかと思っていたのに、そんなことでは何も変わらず。
絶望したのか、今度は酒浸りの日々に突入します。
そのうち、ある日アマが部屋に帰ってこない日があって…
と、こんな風にお話は展開していきます。
主要登場人物は、主人公の女の子ルイと、恋人のアマ、浮気相手のシバ、この三人です。
アマとシバは、二人とも改造バリバリの怖い外見の人達ですが、性格は全然違います。
ルイの恋人アマは、子供みたいに無邪気でイノセントな男の子であるのに対して、ルイの浮気相手のシバは加虐嗜好がありバイセクシャルでもある大人の男です。
主人公のルイは、かなりな依存体質の女の子。
最初はアマに乗っかり、人体改造に乗っかり、最後はシバに乗っかり…
自分一人では生きていけない。存在していること自体が苦しいから、物事に向き合わず逃げ続け、そして誰かに何かにすがって救われようとする。
けれども、そんなことしたって救われるわけもなく。
さて彼女は、この物語が終わった後には、どうやって生きていくことになるのでしょうね。
アマとシバの名前は神様の名にかけられています。
アマはアマデウス、アマ・デウス、アマ・ゼウス…ギリシャ神話のゼウス。
シバはインドの神様、シバ神ですね。
それから、人体改造。
これはかつては、神に仕えるため、神に近づくため、人間を超えるため、まあ宗教的な儀式だったことです。
その他にも痛みを乗り越えることで、共同体の一員として認めてもらうための儀式だったり。
スティグマをわざと背負うことによって、人ではないものや特別な存在になるためのものです。
しかし、現代(の少なくとも日本)では、ショッキングな行為ではありますが、成人してお金さえ払えば誰でもできることでもあります。
人体改造は安易に背負える、お手軽なスティグマです。
(ちなみに、スティグマなんて観点から見たら、私にはなんだか安っぽいものに感じてしまうタトゥーやピアスですが。美の表現という観点から見るなら、私は、人体改造、好きですよ。綺麗だと、美しいものだと、思います。)
そんなことを考えながらこの本を読んでも、迷える子羊のルイが、お手軽に救いを求める物語…みたいな構図が浮き上がると思います。
現代には、こういう救いを求めて(るけど、安易なものに飛びついて、救われず)生きかねている人が、多いのでしょうか。
ルイはそれなりに良い家庭に育った、それなりに恵まれた女の子のはずなのに、それなのに?それだから?生きていくことが苦しいのです。
これは個人のせいなのか、社会のせいなのか、両方のせいなのか。
どこに原因を押し付けたって、時代に社会に適応できない者が苦しまねばならないのは仕方ないことなんでしょうが。
果たして解決策は、あるのでしょうかね。
小説の最後、ルイは水を飲んだ時に、舌に開け拡張したピアスホールを水が通り抜けるのを感じ、
『私の中に川が出来たの』
と言います。
正直、私、この本はあまり面白いとは思わなかったのですが。
道具立てはショッキングですけど、それを取っ払っちゃったら、すでに何度も繰り返されたお話としか思えなくて。
でも、ここの表現だけは、すごく好きです。
水のイメージは良い。
清らかな水の川が、全てを洗い流して何もかもどこかへ連れ去ってくれるなら、いつも清浄でいられることでしょう。
停滞するものより、流動するものの方が、私は好きです。
身体の中に川が流れていたら、とても気持ちがいいでしょう。
蛇にピアス (集英社文庫) 432円 Amazon |
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☆トミちゃんのダイエット奮闘記☆只今休止中
今朝の体重は、
x+2.7kg
でした。
八月に入って、まさかの薬疹騒ぎがあったり、そのまま夏バテに突入したりで、まったく食欲が消えていたのですが。
ここ数日、やっとこさ、お腹が空き始めました。
やたらとお肉が食べたくなります。
肉、美味すぎ!
調子に乗って食べ過ぎてお腹を壊したりしないように、気をつけたいと思います。