福永信 著、『コップとコッペパンとペン』を読みました。
河出書房新社のハードカバーです。





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本にのっけたブローチは、私の手作りです。
今回は羊毛刺繍と、フランス刺繍で作りました。
レトロな猫ちゃんと、キノコ。
デザインもオリジナルです。





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私が読む福永信の本は、これで2冊目です。

1冊目があの『アクロバット前夜』でしたからね。
期待大で読みかかることになりましたよ。

しかも出版は河出書房!
…好きなんですよねぇ、私。

河出文庫、若い頃からよく買ってます。
長野まゆみ、澁澤龍彦、種村季弘、稲垣足穂、南方熊楠、M.エルンスト、ブルトン、サドにマゾッホそれからバタイユ…他にも色々と沢山…あー、最高だなぁ♪
そういえば、思い出した!ソローキンの『青い脂』まで出してくれましたよね、忘れてた、早く買わなくちゃ、今すぐ買わなくちゃ、ちょっとポチってこよう。














前に読んだ同著者の『アクロバット前夜』は。
ありえない状況が波のように何度も押し寄せてくる中、登場人物たちはその状況に全く翻弄されることなく当たり前のように、またありえない行動を起こし…予測のつかない展開で、こちらの笑いを誘う…というより、奪い取る様な。
なんともアヴァンギャルドな小説でした。

面白かったです。



今作も、同様ですね。
何度も何度も、「いやいやいやいや、それはないっしょ?」と心の中で突っ込みながら、一人大ウケしつつ読みました。
ああ、可笑しい♪


本書『コップとコッペパンとペン』は表題作を含む短編集です。

『コップとコッペパンとペン』
『座長と道化の登場』
『人情の帯』
『2』

この4編を掲載しています。
うち、最初の2編は独立していて、後の2編は続きモノです。





私は表題作が一番面白かったです。
『コップとコッペパンとペン』

冒頭の一文。
『いい湯だが電線は窓の外に延び、別の家に入り込み、そこにもまた、紙とペンとコップがある。この際どこも同じと言いたい。』

のっけからアヴァンギャルドすぎる文章です。
意味がわかりませんが、この小説では意味はわからなくてよいのです。
きっと大切なのはイメージです。映像的イメージ。

(…地味に『コップとコッペパンとペン』というタイトルなのに、コッペパンがこの文章に含まれていないところも、ツッコミどころだったりします。コッペパン、どこへ行った?wwwww)

一応、あらすじめいたものを書いてみるとすると、この一編は親子三代にわたる(帯にも書かれています通り)ファミリーロマンスです。
母は父と結婚し、娘は父の謎を追い謎の刑事に会い、娘の息子は…彼については、家族とは関係のない自分の生活しか書かれてないな。

展開が超スピードです。
一行たりとも、ぼんやり読めない。
ちょっと気をぬくと、なんの話をしているのかわからなくなります。
時間も場所も、共通のイメージを介して、次の一行では違う所に軽々と跳びます。

見事ですよ、この移動!
なんていうか、映像っぽいんですよね。
ズームインしてから、ズームアウトで戻ってくると、もう違う場面…みたいな。しかもカメラワークが滑らかで、一瞬、場面が変わったことに気づかないくらい。

この移動は主人公の移り変わりですら同じです。
次の一行では、違う人のお話になってたりします。
油断、できません。


そういう、超スピードで滑かに展開する物語の中。
次々に表れるありえない状況で、ありえない反応をする登場人物たちは、ほとんど行動だけでお話を先に進めていきます。

最初から最後まで、ツッコミどころ満載、シュールな笑いをこらえきれない、一編です。






2編目の『座長と道化の登場』も良かったです。
これまたシュールな、まるでお笑いみたいな、コントみたいな作品です。
登場人物たちの素っ頓狂なやり取りが、笑えました。



3編目『人情の帯』、4編目『2』は、電話がキーとなった、謎だけしかないミステリ…とでも言えばいいのかな?
あ、謎だけしかないので、謎は解けませんよ。
ひたすら謎めいているだけです。








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本書の感想は、前に読んだ『アクロバット前夜』と、正直ほぼ同じようなものです。

福永信の小説…これ、その面白さを説明するのが難しいです。
なんていうか、笑いのポイントが、独特の間とか空気感とか全体の中にあってこそ初めて表れてくるものでして。


とにかく読んでみて!おもしろいから!
超笑えるし、現代美術みたいだし、いいよー!


…が、一番素直な、私の気持ちですね。
身もふたもないですけど。






















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