金田鬼一 訳、『完訳 グリム童話集』全5巻を読みました。
岩波文庫です。






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積み上げたグリム童話集の上に座っているのは、四角い黒猫ちゃんの縫いぐるみです。
この猫ちゃんは、昔、当時の職場の同僚の女の子達と仕事帰りにゲーセンに寄って遊んでいた時、その中でUFOキャッチャーの上手い子が取ってくれました。
「あなた猫好きでしょ?」って、その場でプレゼントしてくれました。
あの日は楽しかったなぁ、懐かしいなぁ…。



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ええと、グリム童話集全5巻を読みました…と、書きましたが。
最近読んだのは5巻だけです。
4巻までは、一年くらい前に読み終えていました。

…なんでこんなに間が空いているかと言いますと。

飽きたからです(笑)


この岩波文庫版のグリム童話集、1巻、2巻辺りまではスラスラと楽しく読めます。
1巻には我々のよく知っているヘンゼルとグレーテルとか、赤ずきんとかが含まれておりまして、改めて読んでもじつに面白いです。

一話一話が短くて、色んな夢のようなお話が次々に読めて、とっても楽しい。

しかし、童話集も3巻辺りにくると、似たようなお話が多くなります。
ちょっと設定が変わっているだけで、筋は同じ、みたいな。

けっこう飽きてきます。


てなわけで、一冊読むたび、記憶が薄れるのを待って、次の巻を楽しむ…というスタイルで、私はこの『グリム童話集』を読みました。





この岩波文庫版全訳グリム童話集全5巻は、ドイツで出版されたグリム童話集第7版の邦訳です。

グリム兄弟の童話集は、何度も出版されておりまして。
初版では、あまり子供向けとは言えない残酷なお話や性的なお話も多く、版を重ねるたびに、そういったものが削られたりしていったそうです。
より子供向けの文章に書き換えられたり、新たな童話を加えながら、グリム童話集は出版を重ねていきました。

第7版ともなりますと、残酷なお話は削られてもう無い…かと思いきや、けっこう残っています。
こんなん子供に読ませてええのん?みたいなお話が。

『子どもたちが屠殺ごっこをした話』なんていうかなり残酷で、ショッキングなお話もあります。
(…ショッキングすぎるので、内容は書かずにおきますね。
何年か前に流行ったような、本当は怖いグリム…みたいな本には必ず取り上げられるようなお話です。)

『青ひげ』や『トゥルーデおばさん』、『白槇(びゃくしん)の木』あたりも、不気味な話として有名ですね。
これらも第7版に残されていますよ。


ちなみに、初版のグリム童話集の全訳は白泉社から出ています。
こちらも読んでみたいのですが。

まぁ、数年後、今回読んだグリム童話集7版の記憶が薄れかけてきた頃にでも読もうと思います。
今読んでも、多分、私、飽きちゃって読まなくなると思いますから。







ええと、今回の記事では、個々のグリム童話の感想を書くのもなんですねぇ。
小学校低学年の読書感想文みたいになっちゃいそうですし。
「ヘンゼルとグレーテルを読みました。お菓子のお家は美味しそうでした、私も食べてみたいです。そして、こわい魔法使いのおばあさんから二人が逃げられてよかったなあと思いました。」
…これでは、いくらなんでも、ちょっと。
私、いい歳こいてアホの子みたいです。



なので、今回、どうして自分がグリム童話集を読もうと思ったか。
その目的でも書いてみることにします。



まず第一には。
当たり前のお話ですが、単純に面白いから、というのがあります。
童話って、大人が読んでも面白いものなのですよね。

特に、夜眠る前、ちょっとベッドで読むにはぴったりです。
一つ一つのお話は短いですし。
つい読みふけって、気がつけば深夜…なんてことになりにくくていいですね。

それに、このグリム童話集は、グリム兄弟が当時のドイツの民間から集めた口承民話をまとめたものです。
基本的にはその伝承をそのまま、あまり崩さずに収録している…ということになっています。

ですから、お話がまとまっているものもあれば、なんだか中途半端なものもあったりするのですが。
そういうものも、この後どうなったんだろうなぁなんて考えると、後味をひいて面白いです。

民話ならではの荒削りな表現も、素朴で、素敵です。
これは洗練された小説なんかの表現とは真逆の面白さですね。
民話は文章としては洗練されていなくても、口承としては長い時をかけて練り上げられています。
こういうものは、読んでいて心地よいですね、リラックスできます。
この岩波文庫のグリム童話集の訳も、素朴な風合いを残していい感じです。

古いドイツの民間の人々の生活なんかが透けて見えてきたり、そういったことも興味をひきます。
歴史の教科書には載らないような民衆の文化を垣間見ると、なんだかその時代に親近感が湧いてきます。

あとは、このグリム童話集にはキリスト教の聖人が主役の童話もけっこうたくさん収められておりまして。
ドイツの民間の素朴な聖人崇拝の様子が伺えて、聖人崇拝とは一体どういうものだったのかというのも、わかりやすい例で見せてもらえて、興味深いです。






第二には。
最近、私、ちょっと興味が湧いて、精神分析学の本を読んでおりまして。
もちろん、精神医学としてではなく、思想としてです。

精神分析学では、メルヒェンは重要な研究対象になっています。
その手のメルヒェンの研究書はたくさんあります。

今後、精神分析学の本を読んでいくにあたって、最低限、グリム童話集くらいは読んでおいた方がいいだろうなぁ、と思いまして。





そして第三に。
グリム童話って、色々なミステリやホラー小説なんかの元ネタになってますよね。
漫画や、映画も多いです。

私、ミステリもホラーも大好きなので、どうせなら元ネタをしっかりと読んでおきたかった…っていうのがあります。

子供の頃からグリム童話集には親しんできましたが、子供向けの本は抜粋ばかりで。
完訳のグリム童話集は読んだことがありませんでしたから、一度はグリム童話集の全部を読んでみたかったのですよね。

今回、しっかり完訳グリム童話集を読んだので、これからは安心してグリムネタの作品を読み漁ることができます。








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そういえば。

このグリム童話集には『ラプンツェル』のお話も収録されています。
ディズニーアニメにもなりましたよね、『塔の上のラプンツェル』。
ストーリーはグリムのとはだいぶ違いますけれど。
ラプンツェルの長い髪は、同じです。


ディズニーのアニメでは、ラプンツェルが長い髪を投げ縄みたいに操って、塔の中をアクロバティックに移動したり、楽しく踊ったりしますよね。






先日、私が、姪っ子1号と遊んでいた時のこと。

私が姪っ子2号に『おむすびころりん』の絵本を読んであげておりましたら、姪っ子1号が私の後ろに回り込んで、なにやら私の髪をいじり始めました。

私、髪の毛、長く伸ばしているんです。
腰よりも長い、スーパーロングです。

「女の子だから、髪をいじるのが楽しいのかな?三つ編みでもしてくれるのかしら?」
…なーんて私は思って、怪しい姪っ子1号の動きは気にせずに、一生懸命、迫真の演技で「おむすびころりん、すっとんとん!」なんて呑気に姪っ子2号に語りかけておりましたら。


いきなりすごい力でグイッと髪を引っ張られて、私、あおむけに倒されてしまいました。
おばさんころりんすっとんとん!ですよ。



どうやら、姪っ子1号、ラプンツェルごっこをしようと、私の髪をつかんで体重をかけてぶら下がろうとしたようで。



「現実の人間の髪の毛は、いくら長くても、ゴムみたいに伸びたりしません!
他人の髪の毛を引っ張ってはいけません!」



姪っ子1号によーく言い聞かせました。
…本人は、不服そうでしたが。
「ちっ、この女、髪が長くてもつかえねぇーな。ラプンツェルできねぇーのかよ?」
って感じでしょうね、姪っ子1号的には。





しかし…髪を掴まれて引っ張られると、抵抗できないものですね。
いくら突然で身構える隙もなかったとはいえ、三歳児の力で大人の私が何の抵抗も出来ずに転がされました。
首の力って、弱いんだなぁ。

長い髪の毛を巻き込まれるような、不意の事故には遭わないように、今後は色々と気をつけようと。
私、本気で、真面目に、思いました。









『それからねえ、にゃあにゃあ〔猫〕がおうちへ駈けていく、あたしの話も、これでおしまい。』

(完訳グリム童話集⑶『三人姉妹』より、童話の結びのお決まり文句)









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