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松山 剛 著、イラスト ヒラサト、『雨の日のアイリス』を読みました。


電撃文庫、ライトノベルです。





今回のご本のお供は、ダイソーさんのフワモコ靴下で作ったソックモンキーです。

蛍光カラーで、かわいい!

おリボンをつけたので、この子は女の子です。






『雨の日のアイリス』表紙絵がかわいいですね。

メイド服の女の子ロボット(…というよりも、もはやアンドロイドかな?)が、レトロなデザインの壊れたロボットを抱いています。


いいなぁ、この絵。


私、ロボット、好きなんですよね。

ガンダムから、アシモ、それにドラエもんまで。

先日ソフトバンクに行ったのですが、そこにいたpepper君も可愛かったなぁ。





『ここにロボットの残骸がある。

   その左腕は肩の部分からごっそりとなくなっており、残った右腕も関節があらぬ方向に曲がっている。下半身はちぎれていてそもそも存在せず、腹部からは体内のチューブが臓物のようにだらしなくはみ出ている。

    一見するとただのスクラップとしか思えないこのロボットだが、かつては人間の家で働き、主人に愛されて幸せに暮らしていた。

    HRM021-α、登録呼称アイリス・レイン・アンヴレラ。

    それがこのロボットの名前である。

    この記録は、オーヴァル大学第一ロボティクス研究所のラルフ・シエル実験助手によって、HRM021-αの精神回路(マインド・サーキット)データを再構成したものである。』



扉をめくると、第1章が始まる前にまず上の序文があります。


ゔ、これは…

悲劇を書く時の常套手段ですね。




先に読者に、主人公に悲劇が襲いかかってくることを教えておいてから、主人公の幸せな日々を描写する。

すると読者は、後で避けようのない不幸が主人公に容赦無く襲いかかってくることを知りながら、その幸せな日々の描写を読むことになる。


主人公が幸せそうであればあるほど、後に必ずやってくる不幸と対比させて主人公の悲しい運命を思い、そこにこそ我々は悲劇を感じるのだと思います。


よく書けた悲劇とは、不幸自体よりも、不幸に先立つ日々の描写が素晴らしいことが条件だと思うのです。





予想通りに、物語はロボットのアイリスと、その主人であるアンヴレラ博士の幸せな日常から始まります。

本文はアイリスの一人称語りです。


アンヴレラ博士とは『ロボット研究の第一人者、ウェンディ・フォウ・アンヴレラ博士。背が高くて、長い黒髪が美しくて、薄い銀縁の眼鏡が似合っている、僕の自慢の博士。』だそうです。


博士が若い美女なあたりは、さすがライトノベルですねぇ。

ちょっぴり百合っぽいイチャイチャもありつつ、ロボットと博士の幸せな日常が描かれています。




この本での「ロボット」は、かなり人間ちっくです。


オイルは血液、チューブは消化器系の内臓、精神回路は中枢神経系…てな具合に、ロボットの構造は人間の身体構造を否応無く思い浮かべてしまうように設定されています。

ロボットには感情もありますし、生きがいだの幸不幸だの、友情や愛情だのも感じています。

死もおそれます。


まぁ、ほとんど人間とかわりはありません。

それでも、ロボットは生き物ではありませんから、モノとして扱われています。


そして、安全回路の為にロボットは、人間に危害を及ぼすこと、人間の命令に背くことはできません。





さて、主人に愛されて幸せな日々をおくるロボットのアイリスちゃんでしたが、その後には…




この本のあらすじは…書かない方が良さそうです。

私自身、この本を読んでいて、詳しいあらすじは知らずに読んで良かったなぁと思いましたし。



冒頭の序文がすでに先の運命を物語っていますからね。

いらないことを語るのはヤボです。



ただ一言だけ添えるなら、あとがきで作者は『破壊と再生』をテーマにこの本を書いたといっていました。

なるほどね…です。






***





この先、私達の現実において、AIがもっと発達して、人間と接するのと変わらないくらいに高レベルまで行っちゃったら。

我々は、一体彼らをどう扱うのでしょうね?


少なくとも、私は、人と変わらないような反応を示すようなものを、ただのモノとして扱える自信は到底ありません。


のび太君だってドラえもんのこと、ただのロボットとしては扱っていないし。

ドラエもんは大切なお友達でしょう?

のび太君以外の人達も、ごく普通にドラえもんを人間と変わらないものとして接しているし。

『ドラえもん』においてはそういったことが、ごく自然に描かれ、それはごく自然に読者に受入れられています。




哲学的ゾンビ…の思考実験ってありますよね?

『物理的化学的電気的反応としては、普通の人間と全く同じであるが、意識(クオリア)を全く持っていない人間』(ウィキペディアより)


外面的には全く人間にしか思えないような反応をしても、実は中身はカラッポなゾンビです。



私、もしも自分以外の人間が哲学的ゾンビであったとしても、別に構わないなぁなんて思っています。

例えそうであったとしても、私自身が対象に人間を感じるなら、それが全てです。

きっと私は、真実よりも、自分の中にある愛を優先させます。

…まぁ、愛なんて大仰な言葉を使ってますが、単なる感情移入のせいなだけなのかもしれませんがね。



だから、AIをつんだロボットが人間みたいなレベルにまできた時には、私はきっと彼らを人間とかわらないものとして受け容れると思うのです。

ロボットという、哲学的ゾンビである可能性の高いものを。





***




まぁ、何はともあれ。

この『雨の日のアイリス』のアイリスちゃんみたいな、かわいこちゃんメイドロボットと楽しく暮らせる未来が実現したらステキだなぁって、とりあえずは妄想しちゃいますね。



なかなか面白い一冊でした。
























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