アイザック・アシモフ 著、池 央耿 訳、『黒後家蜘蛛の会5』を読みました。
創元推理文庫です。


私は、このミステリ短編集、黒後家蜘蛛の会シリーズが大好きなんです。


NYにあるレストラン『ミラノ』にて、月例晩餐会を開く『黒後家蜘蛛の会』という集まりがあります。
現在の会の構成員は特許弁護士、暗号専門家、作家、有機化学者、画家、数学者。いずれもスペシャリストの集まりです。
そして、もう一人、会の専属給仕であるヘンリーもまた正式な会員の一人です。

月例会では、ホスト役を務める会員が必ず一人のゲストを迎えます。
レストラン・ミラノの豪華な食事の後には、このゲストへの尋問がおこなわれます。
「あなたは何をもってご自身の存在を正当となさいますか?」
こんな風に尋問は始まり、ゲストは豪華な食事の代償として、質問には必ず答えなくてはなりません。

黒後家蜘蛛の会は女人禁制です。
そして、ここで話されたことは一切が他言無用です。

ゲストは質疑応答の中で、必ずミステリじみたことを話します。
黒後家蜘蛛のメンバーは、それぞれの専門知識をいかして、ゲストの謎を解こうと喧々轟々議論します。
しかし、謎の答えはわからず、ついに袋小路に陥ったところで、黒後家蜘蛛の会の名給仕ヘンリーが、コロンブスの卵的に鮮やかに謎を解いてみせるのです。


これが、各短編の毎回の流れです。



アームチェアディテクティブ役のヘンリーは、とても行き届いたサービスを提供するプロフェッショナルの給仕です。
受け答えは柔らかく丁寧で、穏やかな人柄です。接客は、常に客をたて、自らは謙遜しつつも卑屈さは見せません。プライドを持って給仕という仕事を務めている様が素敵です。

黒後家蜘蛛の他のメンバー達は、皆、性格に一癖も二癖もあってめんどくさい人達なのですが、心根は優しくて憎めません。
メンバー同士の歯に衣着せぬ会話のやりとりは、とても面白いです。


アシモフさんといえばSFの巨匠ですから、『我はロボット』『ファウンデーション』シリーズなんかがまず思い浮かびますが、このミステリ短編集『黒後家蜘蛛の会』シリーズも忘れてはいけません。

『黒後家蜘蛛』の中で扱われるミステリ自体は、正直、私は普通のミステリ作家のものの方が面白い気がするのですが、そんなことより、黒後家蜘蛛の会のメンバーのやりとりがなんとも魅力的なんです。登場人物のキャラが立ってるんですよね。

私もレストラン・ミラノの月例会にゲストで呼ばれたいなーなんて思っちゃいます。



黒後家蜘蛛の会は、この5巻が今のところ邦訳の最終巻です。
とってもさみしいです。まだまだ会のメンバー達とお別れしたくありません。

でも、まだ六編ほど、邦訳単行本未収録の作品が残っているんですよねー。
…実に読みたいのです。

ペーパーバックで安く売られてないかなと、Amazonさんで見てみたら結構なお値段でした。

古本でかまわないので、もう少しお安く出てきたら買おうかなぁ。

邦訳単行本が出てくれるのが一番嬉しいんですけどね。
東京創元社さん、お願いします、黒後家蜘蛛の会6、ぜひとも、出して下さいー。

















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