Berryz Quest 第八話 ──その26── | Berryz LogBook

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Berryz工房を中心とした、ハロプロについてのブログです。
彼女たちを登場人物にした、小説も書いてます。

「そこ、段差なってるから、気をつけて
 って言おうとしたんだけど」
 
額を掻きながら、申し訳なさそうにサキが言った。
 
「もう、そういうことは、早く言って!」
 
ずぶ濡れになりながら抗議するモモコだったが
不意に周囲が明るくなり、サキが姿を消した。
 
心配そうに覗き込んでいたミヤビも、その場に伏せる。
 
「モモ、潜って。隠れて!」
 
今の騒ぎを気づかれたようだ。
モモコは大きく息を吸い、水中に身を投じた。
 
光の玉が光量を上げ、水路の中にまで灯が射す。
水が流れる音に混じって、男の叫び声が聞こえる。
なにを言ってるのかまではわからない。

光はなかなか弱まらなかった。
 
もうダメだ、息が続かない──
 
限界を超え、頭を上げようとした瞬間
水路の壁に、なにか黒々とした物が見えた。
 
水面から顔を出す。
辺りは闇に包まれていた。

間一髪、どうやら見つからなかったようだ。
 
モモコは大きく口を開け、なるべく音を
立てないよう呼吸した。
 
しばらくしてミヤビの声が背後から聞こえた。
 
「もう大丈夫。さあ、上がって」
 
だがモモコは息を整えるのに必死で
応えることができなかった。
 
ようやく落ち着き、振り返ると
手を差し伸べるミヤビの姿があった。

その隣でサキも心配そうに眉を寄せている。
 
モモコは立ち上がり、ふたりに手招きした。
 
「今ね、ここになんかあった」
「なんかって、なに?」
 
ミヤビが首を傾げる。

ちょっと待ってて、とモモコは
再度、水の中に潜った。
 
光の玉の光量が落ちたため、真っ暗で
なにも見えない。
先ほど見た黒い物体の場所に、手を出す。
 
幅の狭い水路のはずなのに
なかなか壁面にたどり着かない。
 
「痛っ!」
 
腕がはるか先まで伸びているにも関わらず
額をしこたまぶつけた。

モモコは慌てて立ち上がった。
 
「ゴホッ…水飲んじゃった」
「ねえ、なにやってんの。もう行くよ」
 
サキの声がした。

モモコはなるべく音を立てないようむせると
呆れ顔のふたりに向かって、水中を指差した。
 
「ここ、穴、開いてる」
「マジで?」
 
疑いの表情を見せながらも、サキが水の中に入った。

モモコが指していた辺りに腕を突っ込む。
サキの目が見開かれた。全身を水に浸す。
 
「ホントだ、あった!」
 
水から上がったサキが言った。
思わず大声を出しそうになり、慌てて口を押さえる。
 
「ねっ、あったでしょ」
 
モモが見つけたんだよ、と笑顔で自分の顔を指す。
 
「それで、向こうまで続いてんの?」
 
ミヤビが尋ねる。モモコは笑顔を消し、うつむいた。

見たのは一瞬だったし、今は暗くて先まで見通せない。
 
「ちょっと、行ってみる」
 
サキはそう言うと、大きく息を吸い
ふたりが声を掛ける間もなく、水の中に姿を消した。
 
しばらくして、サキが戻ってきた。
 
「大丈夫、あっちに光が見える」
「息、持ちそう?」
 
ミヤビが訊いた。

いくら向こう側に出口があっても
息が続かなければ意味がない。
 
が、サキの話だと、城壁の中に空洞があり
そこでは息ができるらしい。
 
「よし、ここから侵入しよう」
 
三人は、順に水の中に入った。




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