Berryz Quest 特別編 ──その7── | Berryz LogBook

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Berryz工房を中心とした、ハロプロについてのブログです。
彼女たちを登場人物にした、小説も書いてます。

リサコが突然、走り出した。


腰の辺りを持って隠れていたモモコは
支えを失い前方に転びそうになった。

魔物とモモコの間に、遮蔽物がなくなった。
モモコは焦った。

どこかに身を隠さなければ。

どうすればいいかわからず

オロオロするばかりだったが
魔物は彼女など目もくれず、その視線は

駆けるリサコを追っていた。

リサコが魔法陣に入った。

地面が円形にぼんやり光る。

モモコは魔法陣に入れば

呪いが軽減されることを思い出した。


魔物の視界を避け、リサコとは

別の魔法陣に向かった。

なんとか呪われることなく

魔法陣に駆け込むことができ
モモコはその場にしゃがみ込んだ。

視線を向けると、リサコが魔物と

正面から向き合っていた。

「ゴメンね。でも、こうしないとダメなの」

リサコの頬に大粒の涙が伝っていた。


魔物は遊んでもらえるとでも思っているのか
盛んに飛び跳ねたり宙返りしたりしている。

リサコの手がゆっくりと上がっていく。


魔法陣の境界線を越えれば

指先から強烈な放水が始まる。

「ホントに、ホントにゴメンね」

激しい嗚咽のため肩が揺れていた。
もう少しで指先が境界線を越える。

今まさに、モモコの目の前で魔物が

退治されようとしている。

──いいの? リサコに辛い役目を押し付けて

モモ、ホントにいいの?

モモコは激しく首を振った。
口元を引き締め、よろける足取りで立ち上がった。




魔物を目の前にして、リサコの脳裏には
一緒に過ごした数日の出来事が浮かんでは消えた。

軒先で弱った魔物を見つけたときの不安。

サキやユリナに相談したら真剣に考えてくれた。


だが、危険な魔物だとモモコが主張し
ふたりも処分するよう、リサコに迫った。

みんなの言うことが、理解できないわけではなかった。

でも、ひょっとしたら違うかもしれない。
わずかな望みに、すがりたかった。

それに、モモコたちが言うことが正しいとしても
熱病を引き起こすくらい、大したことでは

ないではないか。

なによりも苦しんでいるあの子を放っておけなかった。

魔物を助けたことを、後悔はしていない。

だが、今は違う。

回復した魔物は、強大な魔力を身につけていた。
熱病に侵された人たちは

退治することでしか救えない。

これは仕方のないことなのだ。でも……

あとほんの少しなのに、指先が境界線を越えられない。


石のように固まってしまい、動かすことができなかった。

──ダメ。アタシには、できない。

腕を下ろそうとした、その瞬間

魔物を激しい水流が襲った。

リサコが呆然と見守る中、大量の水に晒され
苦しむ暇もなく魔物は逝った。

あっけない最後だった。

リサコはゆっくりと水流の出所へ顔を向けた。


別の魔法陣の中に、モモコが立っていた。


モモコは悲しそうな表情で、首を振った。

「ダメだよ。リサコに、そんなことさせるなんて
 やっぱり、モモにはできないよ」

リサコは意識を失い、その場に倒れこんだ。




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