Berryz Quest 第七話 ──その13── | Berryz LogBook

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Berryz工房を中心とした、ハロプロについてのブログです。
彼女たちを登場人物にした、小説も書いてます。

説明を求めるサキに、ユリナは

魔物がマーサの部屋に匿われていたこと
朝になったら居なくなっていたこと

モモコが退治したんじゃないかと
リサコが詰め寄ったことなどを話した。

終始うつむいていたモモコだったが
自分が退治したのではと疑われた件になると
つと顔をあげ口を開きかけた。


だが結局なにも言わず、またうつむいた。

「で、そこにサキちゃんが現れたわけよ。
 病気が治ったってことは、つまり、そういうことだから…」

元気になったサキを見て、リサコは魔物が

もうこの世に居ないことを確信したのだ。

「ってことは、アタシの病気が治らなかったほうが

 良かったってこと?
 失礼しちゃうね、まったく」

頬を膨らませサキはカウンターに近づいた。

薬屋の呼鈴が鳴った。


今のモモコに接客ができるような状態ではない。
「はーい」と言いながら、ユリナが薬屋に向かった。

「いやあ、朝早くからすまないね」

そこに居たのは見慣れない顔の

中年の女性だった。

「腕のいい薬師が居るって聞いたもんでね」

隣町からやってきたのだそうだ。


田舎のことだから、隣町といっても早朝の散歩がてらに
ちょっと立ち寄るといった距離ではない。

マーサの腕を聞きつけ、わざわざ来てくれたのだということに
ユリナは自分のことのように誇らしく思った。


「昨日の夜中にね、ウチの旦那が熱出しちまってね」

ユリナは頬に手をあて、それは心配ですねと眉を寄せた。


すると客の女性は手招きをするように手を振り、鼻で笑った。

「心配なもんかい。いつも怒鳴り散らしてるあの宿六が
 静かになって、むしろ清々しているよ」

客の笑い声に釣られ、ユリナも笑顔になった。

「ところがね」

客の女性は不意に笑顔を引っ込めた。

「旦那だけだったらよかったんだけど

 朝になったらウチのチビちゃん
 ああ、三歳と五歳になる娘が居るんだけどさ

 これがまあ、お転婆で」

アタシに似たらおしとやかになってるはずなのに、なんでだろう?


ああ、きっと旦那の血筋に違いない

実は姑が癇癪持ちでいつも困らされる。


そういえば、この前もアタシが掃除していたら──

と、この年頃の女性、平たくいえば小母さんに

ありがちな、ころころと話題の変わる話に

ユリナは一々相槌を打って応えていた。

「あのぉ……」

カウンターに手をつき、サキが

仕切り代わりの戸棚の陰から顔を出した。

「クマイちゃん、ゴメンね…ちょっといいですか?」
「なんだい?」
「えっと、娘さんが朝になったら、どうなったんですか?」

ああ、肝心の話を忘れてたよ、と客は何度も頷いた。

「それがさぁ、チビちゃんふたり揃って熱出しちゃってさ。
 宿六だけだったら、放っておくんだけどね。
 それで、近所で聞いたら、こっちの方で

 熱病が流行ってるとかって」

ユリナとサキは顔を見合わせた。──まさか。


それまでうな垂れていてモモコが

ゆっくりと薬屋に顔を向ける。


そんな三人の様子には気づかず、客の女性は続けた。

「ウチの連中も、その流行り病にやられたのかもしれないって…
 どうしたい? アタシの顔に、なんか付いてるかい?」




                    ── 特別編につづく ──




その12     特別編1