Berryz Quest 第六話 ──その12── | Berryz LogBook

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Berryz工房を中心とした、ハロプロについてのブログです。
彼女たちを登場人物にした、小説も書いてます。

ミヤビの額から、どっと汗があふれ出た。


先ほどの、緊張からの汗とはまったく違う。

冷や汗だ。

もし、もう一歩近づくまで待っていたら
昆は確実に少女の眉間を貫いていただろう。

今日ばかりはチナミのミスに感謝しなければならない。
ミヤビは昆を引いた。

「ゴメンね、大丈夫?」

それまでぼんやり立ち尽くしていた少女が
突然しりもちをついた。

「危ない!」

ふたりは駆け寄った。
が、少女はイヤイヤをするように首を振り
すぐに立ち上がって一歩身を引いた。

チナミが膝に手を着いて目線をあわせ、笑みを作る。

「こんなところでなにしてんの? お名前は?」

少女は怯えた様子を見せながら、指を二本立てた。

「…マイ。……二…三才」
「二、三才?」

この子は自分の歳も言えないのか。

ふたりは苦笑いを浮かべた。


それにどう幼く見積もっても

七、八才にしか見えなかった。


ミヤビもチナミの隣に並び、視線を下げた。

「こんな夜中にひとりじゃ危ないよ。
 お姉さんが、お家まで送ってあげようか」

ミヤビは手を差し伸べたが、マイは伏せていた顔を上げ
大きな瞳で睨みつけるようにしてふたりを見ると
はっきりとした口調で言った。

「いい! ママがいるから」

ミヤビの手を振り払い、逃げるようにして来た道とは反対の
森に続く坂を駆け上がっていった。

「ほらぁ、ミヤが脅かすから逃げちゃったじゃん」

呆れ顔でチナミがミヤビの肩を叩く。

「だって……ゴブリンかと思ったんだもん」

深夜に子供が徘徊してるなど、想像もできない。
体格からしてゴブリンだと考える方が自然だ。

「で、どうする。追いかける?」
「マイちゃん? う~ん…」

ミヤビは考え込んだ。母親が一緒なら心配いらない。
この辺りに大人を襲うような魔物はいないからだ。

だが彼女がそう言っただけで、姿を確認していない。
そのことだけが、気がかりだった。


「マイやぁ~い」

マイが来た道から声が聞こえた。
チナミが光の玉の掲げ、光量を上げた。

「ウメばあさん!」

チナミが声をあげた。
近づいてきたのは、これからふたりが向かおうとしていた

牧場で牛を飼っているウメばあさんだ。

ウメばあさんは額に手をかざし眩しそうに

目を細めていたが、ふたりの姿を確認すると

杖を突きながらトボトボと駆けて来た。

「おお、アンタらかい」

八十八才という歳のわりには元気な方なのだが
持病を抱えておりマーサの薬屋をちょくちょく訪ねてくる。
そのため、彼女たちとは顔見知りだった。

「腰の方はどうです、良くなりました?」
「今からそっち行くつもりだったんですよ」
「ところで、こんなとこでなにしてんです?」

矢継ぎ早に話しかけられ、ウメばあさんはおろおろした。


会話が途切れるのを待って

「それよりも」とようやく口を開いた。

「こんぐらいの、小さな女の子を見なかったかい?
 頭の大きい、こう髪をひとつ結びした、ピンクの服を…」

「マイちゃん!」

言いながらチナミが人差し指を突きつける。
ウメばあさんは口をあんぐりと開け、何度も頷いた。




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