Berryz Quest 第六話 ──その8── | Berryz LogBook

Berryz LogBook

Berryz工房を中心とした、ハロプロについてのブログです。
彼女たちを登場人物にした、小説も書いてます。

薬屋の扉を開け、ふらついた足取りでカウンターまでたどり着くと
チナミは印の削られた杖を差し出し叫んだ。

「ちょっと、これ見てよ!」

なにが、と店の奥からマーサが近づいた。
髪をかき上げながらチナミの手元を覗き込み、顔をしかめる。

「なにやってんの、もったいない」
「ウチじゃないもん、キャプテンがやったの!」

マーサはそのひと言でだけで事情を察したらしく
そうなんだと呟き、店の奥で薬を調合する

リサコの元に戻った。

「ねぇ、もっかい書いてよ、雷の印」
「お金、持ってんの?」
「保障期間中でしょ、ただにしてよ」
「そんなシステムないですから」

不具合が出たとかならともかく、削り取られたのは
当店の責任ではありませんと言われ
チナミは唇を突き出し拗ねた表情を作った。

「わかったよ…払うから書いて」
「サキちゃんがOKしたらね」

あのサキが赦すはずなどない。
無言のままチナミはがっくりうなだれた。


額がカウンターの天板に当たり、コツンと音を立てた。


「どうしたの?」

隣の店からモモコが現れた。
チナミは「これ」とだけ言って杖を突きつけた。

「この前、買ってったヤツじゃん。どうだった?
 使い勝手いいでしょ」

「いいから、上のほう見てよ」

カウンターに頬杖をつき、ぶっきらぼうな声で言う。


しばらく杖を眺めていたモモコだったが
並んだ印のひとつが

削られていることに気づき、声をあげた。

「えっ、どうしたの、これ?」
「雷の印があったんだけど、キャプテンが削っちゃったの」
「なんでぇ!?」

チナミは驚くモモコの顔をチラリと見上げ

すぐに視線を落とした。


暇を持て余すように指遊びをしながら呟く。

「ちゃんと練習したらさ、威力の調整だって

 できるようになるし、命中率だって上げられるのに」

「ああ…練習してないのに使っちゃったんだ」

呆れ顔で言うモモコに、チナミは身体を近づけた。
昨夜からの出来事をぶちまける。


「そりゃあさ、悪いのはチナミかも知んないけど
 削り取るなんて酷いと思わない?」

「うーん、まぁ酷いよね」

「でしょ! 自分、なんもやんないくせに
 怒ってばっかなんだから」

「そうだねぇ、キャプテン短気だもんね」

「あのさぁ…」

白熱するチナミとモモコに

マーサがため息混じりに声を掛けた。

「グチるんだったら、余所でやってくんない?
 はっきり言って、迷惑なんだけど」

はき捨てるように言うマーサの隣で

乳鉢を抱えたリサコが頷く。


ふたりともチナミによるサキの愚痴は聞き飽きたと
言わんばかりの表情をしている。

「違う、ちゃんと用があって来たの。

 なんかこう、疲れが取れる薬ない?」

マーサがリサコの元を離れ、薬棚に向かった。
それを合図に、チナミのキャプテン批判が再開される。
人使いの荒さから始まり、料理の腕前にまで話は及んだ。

「なんかさぁ、もうやってらんないって感じ」

伸びをするようにして体を反らし、天を仰いだ。


マーサがカウンターに小さな包みと水の入った杯を差し出した。

「はい、滋養強壮に効く薬」
「ジ、ジヨー?」

首を傾げるチナミに、マーサが答える。

「身体が元気になって、やる気が出るってこと」

後半の説明は余計だと頬を膨らませながら

チナミは包みを開けた。


口に含み、顔をしかめる。

慌てて水で流し込んだ。

武器屋の呼び鈴が鳴った。
客が来たらしい。モモコが店に戻る。

「マァ、これ苦いんだけどぉ!」

責めるような口調で言い、チナミは舌を出した。

「良薬は口に苦しって言うでしょ。ガマンしなよ」

まだ味が残ってると言いながら水をがぶ飲みする。
その様子を見ながら、リサコがイヒヒと笑い転げた。




その7       その9