
2015年9月8日 奈良新聞 国原譜 より転記
「長岡京への遷都はどの道を通ったのでしょう」
昨年奈良市に転居したという女性から、会社に電話をいただいた。
平城京から北に伸びる街道は、般若寺近くの「奈良坂越え」や、
天童よしみさんも歌った「歌姫越え」が有名だ。
平城宮の西端付近から北に上がる「渋谷越え」は知る人も少ない。
近鉄京都線などがそのルートとされるが、
電話の主の幸村さんは大正時代の地形図などから「渋谷越え」を推定し、
歩いてみたという。
幸村さんによると、現在の市道「中部第60号線」に当たり、
山陵(みささぎ)瓦窯を経て渋谷川の谷筋を行く。
近鉄高の原駅付近までたどれることを確認し、
奈良新聞社に“幻”の「渋谷越え」と連絡してくださったのが冒頭の電話だった。
都が平安京に移ってからも、平城京への街道は多くの貴族が利用した。
古都に寺社が残ったためだが、どのルートがどのように利用されたのか、
考える機会は少ない。
幸村さんは「遷都の道は?」という疑問から、「渋谷越え」が今もたどれることを発見した。
その情熱に、歴史の鍵が日常の中にあることを実感した。(増)
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奈良新聞 編集部 出版課 の 増山さんが書いてくださいました。