〜花物語 貝木泥舟の台詞より〜
“好きな奴が
お前を好きになってくれるとは限らないのと同様、
嫌いな奴が
お前を嫌いになってくれるとは限らないんだよ。
そして、嫌われてくれるとさえ限らないんだ。
漫画とかの、キャラクターじゃねぇんだぜ?
『嫌なだけ』の人間はいない。
『悪いだけ』の人間はいない。
『どの方向から見ても同じ』性格の奴はいないし、
『どの時点でも同じ』性格の奴はいない。
お前は走るのが得意なようだが、
しかし常に走りはしないだろう?
歩きもすれば、寝もするだろう。
同じことだ。
俺は金が大好きだが、
その金を使いもする。
特に思い入れがなくっても、
誰かに親切にすることもあるさ。”
人間は、特に理由や立ち位置があるわけではない。
ただ在るだけ。
なのに、後から言葉で縛ったり、
一括りにしたり、分けたり、
理由を無理やり探したりするから、
どんどん“そのもの”から遠ざかっていく。
私は「貝木泥舟」が好きだ。
彼は実に面倒くさい。
彼は嘘つきではないが、
話す内容が真実だけではない。
彼は偽善者ではないが、
やること全てが善良なだけではない。
大切なものを失い、
願いを叶えられなかった者。
“偽物”だからこそ、
“本物”を越える魅力を滲み出させる。
唯唯人が良いだけの、見目麗しい、
誰もが好むような
正直者の爽やか君など、ヘドが出る。
かつて俺がなりたがっていた“本物”だが。
“偽物”にも劣る不気味な理想像だ。
彼のような、貝木泥舟のような、
陰鬱として、
自分を買い被ることのない、
決して劇的ではない、
事実から目を背けない、
真に優しい“偽物”が好きだ。
それこそが、
今まで俺が追い求めてきた“本物”よりも、
愛らしく血が通う“自分自身そのもの”だからだ。
私は乱高下するから、面白い結果が出そうだ。
この躁と鬱の波を、
逆に切り離して客観的に観察する、という
楽しみに代えてしまおうという寸法だ。
私はなかなか、
側から見るには面白くめんどくさい、
飽きない奴だろうから。
今日はよく眠れますように。


