S君
S君はクラスでも
小太りのチビで
ほとんど目立たない大人しく無口で
休み時間も本ばっか読んでるやつやった。
ほんで
なんか知らんが
謎の風格があって
誰からもぞんざいな口の利き方や扱いを受けず
先生すら丁寧に話かけてた。
(俺らは呼び捨てでボロクソやけど)
ある日の昼休み、S君が赤と青と白の電線を
机の上に出して、本を見ながらなんかしてた。
おー!っと思うて話しかけたんが
最初やった。
S君はハムと呼ばれるアマチュア無線の資格も持っとった。
ほんで
ハムよりもオーディオが大好きで
名前は忘れたけど
オーディオの月刊誌を
常にカバンに入れてた^ ^
S君ち、貧乏でなぁ。
家は激狭の文化住宅やった。
せやから
ステレオや無線機なんか家にはない。
唯一の楽しみは
月に2冊の本、
オーディオとアマチュア無線の本。
ほんで
星電社のゴミ捨て場で拾ってくる電線や
ダイオードやトランジスタを眺めて
楽しんでた。
S君に
我が家のモジュラーステレオの音が、めっさ小さいねん、って話をした。
ものすごい難しい回答が返ってきて
俺は何一つ理解できんかった( ; ; )
それでも
S君と話をするんは楽しかった。
ナニひとつ読めんオーディオの本も
眺めてるだけでもオモロかった。
S君の謎なとこは
そんなにオーディオ好きで知識はあるのに
俺のステレオを直してやろう、とは
絶対に言わなんだ。
今から思えば
おそらく対人コミュケーションに
かなりおかしなとこのあるヤツやったわ^_^
理解しにくいヤツと
理解できない(漢字もカタカナも分からん)本を
見ながら、噛み合わない会話をする。
分かったのは
S君は働き出したら
自作オーディオを作りたい!ってことだけやった。
俺は
バイトもあったし、喫茶店行ったり
バイク乗ったり、町を徘徊したり
せなあかんことが、ようさんあったんで
ずっとS君と遊んでたワケではなかった。
オーディオや無線も好きやったけど
S君のように
青春の全てをそこに注ぎ込んでるワケには
いかんかった。
他のことの方がオモロいしな^ ^
やがて、俺のステレオ熱も冷めて
俺は近所の普通科高校へ。
S君は国立の高専に行った。
もうその頃には挨拶程度の間柄やったしな。
ずいぶんと時が経ち
10何年か前
同級生の漁師から電話があった。
「今、S君、拉致って飲んでんねん!
和尚、仲良かったやん。
久しぶりやし、来えへん?
〇〇(居酒屋)におっさかい!」
行った。
おった。
中2のあの頃と
寸分違わないS君がおった\(^^)/
小太りチビ
大人しそうやけど
なんや意味不明の風格がある。
そして
ハゲてすらなかった^_^
漁師のツレとS君は小学校が同じ。
たまたま、お盆に墓参りに帰ってきてたS君を
駅前で見かけて拉致したらしい。
すでに酔っ払いの漁師が
S君をてってー的に尋問してた。
今、仕事なんなん?
結婚しとん?
子供は?
学校(高専)行って何しとったん?
車、何乗っとん?
嫁はん、べっびん?
子供、何歳?
出世した?
どこ住んどん?
二階建て?
マンション?
そんな感じ(^◇^;)
俺も興味津々で
S君の話を聞きた。
あまり
ハキハキと喋るヤツじゃないのは
昔と同じ。
根気強く聞く。
要約すると
高専をとても良い成績で卒業した。
誰もが知ってる大手の電機会社に勤めて
半導体を専門とし
辞めて、趣味のオーディオ!に走り
半導体ではなく
真空管を使った手作りアンプで商売をしているとこのことやった。
そっかー
S君はずっとオーディオ好きで
ついにそれを仕事にまでしたんや。
すげーなー^ ^
って感心してた。
その間にも
ベロベロ漁師が忖度なしにグイグイいく。
S君にもガンガン飲ます。
尋問するする(^_^;)
要約すると
S君は独身。
結婚歴なし。
彼女いない歴が年齢そのもの。
ほんで童貞やった♪( ´▽`)
学校ん時
会社ん時
ずっーーーーーと電気のこと一筋。
アニメもアイドルもなし。
ずっーーーーーーーーと
電気、電気、電気のこと。
ほんで
家におる時は
真空管、真空管、真空管。
もう
真空管イノチ!!
さらに
各種の真空管を並べて
それをオカズに
自慰行為ができ
真空管以外では
全く性的興奮をしないそうだ!(◎_◎;)
俺は
思うたね。
あの時
S君とともに
青春の全てを
オーディオに全張りしてたら
俺も
真空管フェチになってたんやな。
あの時
別の青春の道を
歩んで行けて
よかった
よかった
と。。
( ̄▽ ̄)
おしまい