前回の投稿でふるさと納税の控除が反映されていなかった話を紹介しました。

 

 

 

 

ふるさと納税の詳しい仕組みを理解している人は少ないと思います。なぜなら、仕組みが結構複雑だからです。仕組みが複雑で手順を間違えれば、落とし穴にハマります。「落とし穴=税金を多く支払う」ということです。

 

せっかく得する話なのに、落とし穴にハマって損をしないようにするためにもしっかりとふるさと納税の仕組みを理解する必要があると思ったので、仕組みをまとめて置きたいと思います。

 

すべてのソースは国税庁のページになります。

 

ただ、国税庁のページでは理解しづらいので、今回例を使って紹介したいと思います。

 

まずはふるさと納税の説明です。

ふるさと納税は、ご自身の選んだ自治体に対して寄附を行った場合に、寄附額のうち2,000円を超える部分について、所得税および個人住民税からそれぞれ控除が受けられる制度(注)です。

 

この説明で制度の全体像がわかりますが、「所得税及び個人住民税からそれぞれ控除が受けられる」の部分が果たしてだれがどのくらいお得なのかはわからないので、これから細かい話になっていきます。

 

計算方法・計算式の部分に以下のように記述があるので、これを紐解いていきます。

① 所得税
(ふるさと納税額 - 2,000円)を所得控除(寄附金控除)
(所得控除額 × 所得税率(0%から45%が軽減(注))
所得控除の対象となる寄附金の額は、総所得金額等の40%が上限です。

② 個人住民税(基本分)
(ふるさと納税額 - 2,000円) × 10%を税額控除
③ 個人住民税(特例分)
(ふるさと納税額 - 2,000円)× (100% - 10%(基本分)- 所得税率(0%から45%(注))

 

 

① 所得税

 

まずは1つ目で、ふるさと納税額から2000円を引いた額が所得控除となるというものです。

 

所得税の仕組みを知らない方のために、簡単に復習しておきます。詳しくは所得税の仕組みを御覧ください。

所得税は、収入(お給料)から様々な控除を引いた後のものを所得としてそれに係る税金です。控除には、以下のようなものがあります。

  1. 基礎控除: 納税者本人の合計所得金額が2400万円以下なら48万円 (意味は、この48万円に対しては所得税をかけませんよということです)
  2. 扶養控除: 収入が基準以下の親族を養っている場合一人あたり48万円(意味は、専業主婦や子供を養っている場合に、税金をかける対象を養っている人一人あたり48万円は所得税をかけませんよということです)
  3. 社会保険料控除:健康保険、国民年金、厚生年金保険など、負担したお金分(意味は、これらの社会保険は収入からすでに減ってしまってるのでこの部分には所得税かけませんよということです)
  4. 医療費控除:一定額を超える医療費を払った額から保険料などと10万円を引いた額(意味は、医療費がたくさんかかってしまった場合には、所得税をかける対象を減らしてあげますよということです)
  5. 他にもたくさん
この控除の中の一つに寄付金控除というものがあり、ふるさと納税はこちらに当たります。
 
そのため、この①でどのくらい税金が減るかは、「所得税率×(ふるさと納税した額−2000円)」という額になります。所得税率は、所得の額によって決まっています。収入から上にもかいたような控除をすべて引き算した額が課税所得となるので、その値と見比べる必要があります。年収が600万円の場合は控除を引き算したあとの課税所得が3,300,000円 〜6,949,000円であれば所得税率は20%、1,950,000円~3,299,000円であれば10%という感じになります。
 
課税所得は、扶養家族がいるかどうかや、どんな控除があるかどうかにも左右されるので一人ひとり年収が同じでも異なるので自分で計算する必要があります。
 
今回は例として所得税率が20%と仮定しましょう。その場合、①で減る税金の額は、ふるさと納税を10万円したとすると「20% x(100,000 - 2,000)」となり19,600円です。
 
 

 

② 個人住民税(基本分)

 

 

「(ふるさと納税額 - 2,000円) × 10%を税額控除」と定められています。

 

こちらは住民税からの控除となります。住民税は、前年の給与をもって計算するので注意が必要です。

 

まずは、所得税のときと同じように、収入から控除を引き課税所得を計算します。ただし、基礎控除に関しては所得税では48万円ですが、住民税では43万円となっていて異なる金額のものもあるので注意しましょう。

 

東京都における住民税の所得割額の計算式は「都民税+市町村民税(特別区民税)-(調整控除+税額控除)」です。住民税の所得割額の税率は「都民税4%」「市町村民税(特別区民税)6%」という標準税率が定められています。

 

税額控除ということで直接住民税支払いのときに減らされる額が(ふるさと納税ー2000円)x10%となります。ふるさと納税を10万円した場合には9,800円となります。

 

 

③ 個人住民税(特例分)

 

 

「(ふるさと納税額 - 2,000円)× (100% - 10%(基本分)- 所得税率(0%から45%(注))」

 

最後に難しい部分です。①の例で所得税率が20%だったと仮定しているので、同じ所得税率を使う必要があります。そして、ふるさと納税は10万円と仮定しているので、(10万円-2000円) x (100%-10%(基本分) - 所得税率 (20%)) を計算することになります。

ふるさと納税10万円した場合には、98000円x70%になり68,600円となります。

 

 

①〜③を合計

 

 

①〜③を足すと、19,600+9,800+68,600=98,000円 となります。

 

これが「寄附額のうち2,000円を超える部分について、所得税および個人住民税からそれぞれ控除が受けられる制度(注)です」で表されている10万円寄付したら、2000円を超える部分、つまり9万8000円分が所得税および個人住民税からそれぞれ控除が受けられるという意味でした。

 

 

納税通知書内でふるさと納税を確認する方法

 

もう少し詳しく見てみると ① 9.8万(ふるさと納税額-2000円)x0.2(所得税率) + ②9.8万(ふるさと納税額-2000円)x0.1(住民税率) + ③ 9.8万(ふるさと納税額-2000円)x0.7(所得税率と住民税率以外の部分) で計算してるので結局 9.8万x(0.2+0.1+0.7) = 9.8万というふうになり、所得税率がいくらであろうと控除される合計額は同じということになります。ただし、控除される対象が所得税なのか、住民税なのかは、所得税率によって割合が異なるので、注意が必要です。

 

10万円のふるさと納税の場合:

  1. 所得税率45%:4.41万円は所得税から控除され残りの5.39万円は翌年の住民税から控除
  2. 所得税率20%:1.96万円は所得税から控除され残りの7.84万円は翌年の住民税から控除

 

この違いは、住民税をチェックする際に重要です。納税通知書で確認する際には、寄付金控除の欄に(ふるさと納税額-2000円)x(1-(所得税率))が書かれているかを確認する必要があります。

 

これを知っておけば、ふるさと納税の控除がしっかり翌年の住民税に反映できているのかをチェックすることができます。