レアルの“至宝”の持ちぐされ | フーリガン通信

レアルの“至宝”の持ちぐされ

ラウール・ゴンサレス。この通信の読者に説明は不要だろう。


そのラウールに関するニュースをネットで見ることが多い。その内容は「引退」か「移籍」。まるでそれ以外の選択肢がないかのような報道は信じたくないが、今季シーズン前の購入品が並ぶピッチで、ラウールを見る時間が少ないこともまた事実である。


“英雄”、“象徴”、至宝”、“生きた伝説”・・・あらゆる賛辞で飾られることが許された背番号7の“カピタン(キャプテン)”に対するこの処遇、人がどう感じようが、それは冒涜であり、侮辱である。少なくとも私はそう思う。


ラウール自身が引退について語ったことも事実である。それは1年前のことである。


「自分を取り巻く状況は深刻であり、トップコンディションを維持したまま引退できればと考えている。調子が良いときには『本当にFootballをやめる気があるのか?』と問いかけるものだが・・・。現時点では2011年にFootballに終止符を打とうと考えている。」


しかし、私はそれを信じなかった。その2008-09シーズンのリーガ・エスパニョーラでも37ゲームで18得点、2ゲームに1点取っているのだ。誰が信じられよう。


そもそも180cm73kgの体はストライカーとしては恵まれているとは言えないラウールは、そのポジショニングの良さと、ボールを受ける際の動きの質で勝負してきた頭脳派ストライカーである。フリーな状態でボールを受け、予めすべてをイメージしていたかのように流れるような動作でシュートを放つラウールは、ケガも少ない。“長持ち”するプレーヤーの典型なのである。


しかも性格は真面目。トップも、左サイドも、MFも、監督が望むポジションはどこでも器用にこなす。頻繁に変わった歴代の監督との確執も聞かない。少なくとも現在のラウールは、自らの意思でプレーを止めるまで、ピッチに立つ資格がある。キャプテンマークを腕に巻いて。


そんな彼が、トップコンディションでありながら、自身が目標と決めた2011年よりも、1年も前にプレーする機会を奪われている。


レアル・マドリードでキャリアを望んでいるであろうラウールが、前監督シュスターが勧めるように他の場所であと数年プレーすることはないだろう。噂されるMLSでプレーすることもないだろう。

それを知っているからこそ、そのレアルでベンチに座る“背番号7”を見続けるのは忍びない。


C.ロナウド、カカ、ベンゼマといった新参者がクラブの顔になっても、レアルはリーガで首位のバルサに現在勝ち点5はなされた2位・・・


そんな状態に、ラウールを使わないのは、それこそ“至宝”の持ちぐされというものだ。


魂のフーリガン