ゴンへの磐田の愛情 | フーリガン通信

ゴンへの磐田の愛情

J2コンサドーレ札幌のマーケティングが活発なようだ。年明け早々クラブを挙げてのチケット販売、宮の沢の練習場「白い恋人サッカー場」へのファン誘致キャンペーン計画などを続けて発表。もちろん磐田から獲得したゴン中山雅史(42)の特需を生かしてのことである。



ゴンは昨季、J1磐田でリーグ戦出場が1試合に終わり、戦力外通告を受けた。磐田一筋20年の功労者に対し、クラブ側はアドバイザー転向を要請したが、中山は現役続行を希望。複数のクラブから誘いを受けたが、最終的に体調管理面での施設が充実している札幌を選んだ。


札幌では推定年俸750万円の単年契約。磐田での2200万円からは大幅のダウンである。しかし「選手に対して強い情熱がある」、「まだまだうまくなりたい」というゴンは金ではなく、プレーするための環境を選んだ。



ゴン加入のマーケティング効果はてき面だった。クリスマスイブに札幌のホテルで行われた入団会見には100人以上の報道陣、10台以上のテレビカメラが並び、恐らくスポーツを報じるすべての日本のメディアでそのニュースは伝えられた。この会見一の広告宣伝効果だけで、ゴンの年俸数年分に当たるだろう。



余談だが、その前にも札幌は、年間2億円のユニホーム胸スポンサーからの撤退を決定していた「お値段以上ニトリ」を、ゴンの移籍を条件に来季袖スポンサーとして年間5千万で契約している。



人気選手の獲得はクラブの立派なマーケティング戦略である。だから、札幌の積極的な活動にとやかく言うつもりはないが、プレーを求めてたった年俸750万円の契約を呑んだ選手にプレー以前にここまで活躍させるやり方には、ゴンを客寄せパンダにしようとする魂胆が明らかで、私は個人的には好きではない。



磐田はゴンを一人の現役プロ・フットボーラーとして扱っていた。だからこそ、(顔見世の意図で出場させた最終節以外は)ピッチに立たせることなく、来季戦力外を通告した。間違いなくマーケティング効果のあるゴンを、飼い殺し状態にすることなく、その意志を尊重して送り出した。



磐田のゴンに対する態度を冷たいと見た人もいるだろう。しかし、私は磐田というクラブに、ゴンに対するの深い愛情を感じる。ゴン自身の幸せを願う無償の愛を。



ゴンも磐田に対し愛情を感じているだろう。彼の磐田での最後の挨拶は感謝に満ちていた。

「20年間、色々とありがとう。札幌では磐田で成長させてもらった魂を胸に、ピッチで走りたい」


私もゴンの幸せを願う。それは現役でプレーできる喜びである。


魂のフーリガン