大分トリニータ前社長の“天下り” | フーリガン通信

大分トリニータ前社長の“天下り”

1月4日に新しい観光庁長官の就任のニュースがテレビに流れた。「新長官に溝畑宏氏が就任・・・」


名前を聞いても分からなかったが、画面を見て驚いた。なぜなら、それは11月にサッカー以外で日本サッカー会を騒がせた、あの大分トリニータを12月に辞任したばかりの、あの社長の顔であったからである。そしてすぐに思った。・・・「何故?」


前原国土交通相によれば、大分をゼロから立ち上げ、J1昇格、ナビスコ優勝にまで導いたその「経営手腕」を、今後の観光振興に生かすことを期待しているという。


ちょっと待って欲しい。溝畑氏の辞任の理由はJ2降格という「成績不振」ではなく、「経営不振」であったはずだ。


しかも、Jリーグの公式試合安定資金からの緊急融資を申請した際は、当初2億円程度の資金不足と見られていたが、そのわずか5日後に4億円の不足に上方修正するお粗末さ。結局10億円の基金から6億円もの融資が決定したが、その際に鬼武Jリーグチェアマンは大分の経営について「経営破綻に近い、あってはならない経営」と吐き捨てた。


溝畑社長はそんな経緯があって12月5日のシーズン終了後に引責辞任したのである。


優秀な経営者でも経営がうまく行かないいことはある。しかし、せめて辞任前に後処理をするのが経営者であろう。しかし、その後の調べで、2009年1月期の債務超過5億5800万円は、9億円以上になることが判明。基金からの融資の実行には12月10日までに後任社長を決定することが条件であったが、辞任後の社長代行となった副社長も翌週に辞任、後任社長は未定のまま青野経営企画部長が代表取締役代行を務める。年間9億円規模が望ましいとされた来期運営予算も、11億円規模から削減できず、Jリーグも融資の実行を緊急停止した。

こんな状態でありながら、溝畑氏は長官就任について「失敗は教訓とし、新たな職務を全うすることで恩返ししたい」と引き受けたという。


決意を新たに再起を図るのは結構。後任社長を決めるのも、次期予算を立てるのも次のマネジメントの仕事かもしれない。しかし、私だったらそんな「後を濁し放題」でクラブを離れる無責任な男を「経営者」とは思わない。


そして自治省高級官僚の職を投げ打って民間に下りたはずの男が、いつの間にか観光庁の長官に堂々と「天下り(天上がり?)」。それを「抜擢」と呼ぶ民主党政権もまた、私はまったく信頼できない。


溝畑氏が大分の社長時代、クラブは平均3万人の観客動員を目指す「3万人プロジェクト」を推進していた。偶然にも観光庁は現在「外客3千万人を目標とする観光政策を推進している。業績が問われない行政で、大分時代の調子で国家予算を浪費することだけは避けて欲しいものだ。今回使うのは我々の税金、国民が株主なのだから。


魂のフーリガン