老いた王子の帰還 | フーリガン通信

老いた王子の帰還

「4月に決める。状態が良く、チームに望まれ、リッピ監督が招集してくれれば戻るだろう。」

セリエAのローマ所属のFWフランチェスコ・トッティ(33歳)が1月2日に地元のメディアに対して語った、アズーリ復帰への意欲である。


トッティは2006年のドイツ大会で優勝を飾って後、自身の怪我、代表で受ける批判、クラブと代表の過密スケジュール等を理由としてアズーリを離れたが、その後彼の去就は迷走する。2007年7月に正式な引退表明を行い、周囲は彼の「決断」を尊重したが、ユーロ2008の敗退、、リッピ監督の復帰、そしてコンフェデ杯の惨敗など、アズーリの環境が変わる中で、周囲の期待と彼自身のはっきりしない態度と発言により、一度引かれたはずの幕は何度も揺れ動いてきた。


元々1-0の勝利がもっとも美しいというイタリアである。決定力の高いトッティの復帰は、その1点を取ることだけを考えればプラスであろう。実際に、アズーリのキャプテン、カンナバーロから直接説得があったとも聞くが、私はトッティの復帰がもたらすアズーリへの影響は、決して好ましいものだけではないと考える。


現在のW杯は前回大会の優勝国も予選を戦わなければならない。そしてアズーリはトッティ抜きで予選を突破した。アイルランド、ブルガリアといった競合国と同じグループで、現在のチーム力を考えれば決して楽な予選ではなかったが、それでもチームはイタリアらしく堅実に10ゲームを7勝3分0敗という成績で勝ち抜いた。


そこにトッティは大会直前になって「ご苦労!後は任せろ!」といった感じでチームに加わるというのである。予選を戦ったメンバーにしてみれば、面白いはずがないだろう。


Footballは言うまでもなく、チームスポーツである。ベテラン監督であるリッピも当然、トッティの招集に伴うリスクは承知しているはずだ。その証拠に、トッティは昨年にも「リッピ代表監督の選択と自分のコンディション次第。リッピにはたくさん借りがある」などと語っていたが、一方のリッピはトッティとの過去の良好な関係に配慮しながらも「最終的に(代表復帰を)決めるのが私だ」と語ってきた。


トッティが「4月には」といっている以上、リッピの最終的な決定ももう少し先になるのだろう。しかし、その結論がどういうものになろうが、リッピには次のような選手がいることも、十分に考慮しなければならない。


「代表に呼ばれなくなったら現役を引退する。それが俺の考え方なんだ。」


アズーリに選ばれることの重さが決して軽くないことが良く分かるだろう。

・・・アズーリの守護神ブッフォンの言葉である。


魂のフーリガン