2年間の後悔 | フーリガン通信

2年間の後悔

10月15日ホームでウズベキスタンに引き分けた。最悪の結果は避けられた?冗談じゃない。相手はスペインでもブラジルでもない。ホームでの引き分けは負けである。日本は勝ち点を1つ積み上げたのではなく、2つ失ったのだ。明らかに弱い相手に。


前半のウズベキスタンのプレッシャーについて、指揮官はゲーム後に「相手が予想以上に激しく来た」、「これまで見たゲームでは最初から来ることはなかったので・・・」と驚いていた。“負けた”ことに対する言い訳が入っていたとしても聞きたくないコメントだった。相手はすでに最終予選で2連敗を喫しているのだ。こう負けられないのに、これまでと同じ戦い方で望んでくる訳がないだろう。言い訳ではなく、本当に予想外であったのであれば、岡田は危機管理能力がなさ過ぎる。そういう人間には監督をする資格はない。


しかも、相手にはジーコがいるのだ。彼は日本がこれまでどういう相手に苦戦をしたかは、自分の痛みとして認識している。だから日本に、日本の個々の選手にどうのように対処したらよいかを熟知してる。日本がウズベキスタンの予想外の戦い方に苦戦したということは、過去の日本代表監督であるジーコの方が、現代表監督の岡田よりも上手だったということを意味している。日本国民があれほど無為無策と罵ったジーコに、岡田は“負けた”。


ジーコが4年間日本代表監督を務めたのに対し、一方の岡田は1年未満。選手に関しても、昨日の日本代表先発メンバーでジーコ監督の経験が無いのは19歳の香川のみ(内田は鹿島で良く知っているはず)。こうしてみると、岡田の分が悪い。では、岡田はジーコに勝てるはずはないのか?そんなことはない。問題は、ジーコ後の2年間の話なのである。


日本はジーコと共に闘ったドイツでの惨敗の反省から、新たなコンセプトを求めなければならなかった。どういうサッカーをしたいのか、それが決まればそのサッカーを実現するための選手が代表に呼ばれることになる。そしてジェフ千葉に魔法をかけて見せた知将オシムを迎え、日本サッカーの「日本化」という改革に着手した。“決定力不足”という永遠の課題は引き継いだが、ピッチで展開されるサッカーの質は明らかに変わった。ビッグ・ネーム中田英寿の変わりに、数多くのスモール・ネームがピッチを駆け、選手の動きは速く大きくなり、しかも連動性が見て取れた。横と後ろにしか行かなかったボールは、前に飛び出す選手が増えるにつれ、前方への選択肢が増えた。結果はなかなか出なかったが、より攻撃的になった日本代表に、少なくとも将来に対する期待は持てた。


しかし、ご存知の通り改革の途中でオシムは病に倒れ、その後にフランスW杯予選で救世主となった岡田が登場した。就任当初はオシムサッカーの継承を託され、自身もそう宣言していたが、やはり監督というのは我が強いものでサッカー観の違いは隠せない。結果が出ない中、最後は開き直って“オレ流”に戻した。そして気が付くと、オシム・チルドレンは消え、ピッチの上ではボールは動くが選手が動かない、“個”に頼ったサッカーに戻ってしまった。いつか見た、ジーコ時代と同じような・・・


日本がジーコに勝つためには、ジーコの後に新しく積み上げた部分を武器として闘わなければならなかった。そんな武器があれば、ジーコの持つ過去の情報はむしろウズベキスタンにとって逆効果となるはずである。しかし、途中まで積み上がってきた新しいコンセプトを岡田は否定し、自ら崩してしまった。崩す行為そのものを否定するものではないが、重要なのは次に何を積み上げるのかについての明確な意図・プランである。しかし、残念ながら、岡田自身がオシムの後に新たに積み上げたものはないし、どういうものを積み上げようとしているのかの意図も私には見えない。


ウズベキスタンのカシモフ監督はゲーム後の会見でジーコのアドバイスが有効だったか?という質問に対し、「彼の情報の一つ一つが非常に役立った。」と答えた。つまり、日本代表はジーコ時代と同じ選手達が、同じようにプレーし、同じコンセプトのサッカーを展開した・・・「ジーコのアドバイス」が生きたということは、そういうことなのだ。日本は2年間進歩がなかったことが証明されたのだ。いや、正確に言うと進歩がなかったのではない。オシムと共に間違いなく一歩進んだ日本サッカーは、岡田と共に一歩後退した・・・違うだろうか。


しかし、まだ最終予選も2試合が終わったばかり、敗れたわけでもないし、下を向く必要もない。私自身、日本は南アフリカに行けると信じている。しかし、岡田が連れて行ってくれるとは思っていない。連れて行ってくれるのは選手達である。2006年のドイツでの痛みと悔しさ心と身体で覚えているのは岡田ではなく、実際に闘った彼ら、そして行きたくても行けなかった彼らだからである。


11月のカタール戦、彼らの魂の咆哮に、私は期待する。


魂のフーリガン