アルゼンチンの狂気と本気 | フーリガン通信

アルゼンチンの狂気と本気

アルゼンチンサッカー協会が現地時間の2日、北京五輪に臨む代表選手18名を発表した。発表されたメンバーは以下の通りである。

GK:
ウスタリ(ヘタフェ/スペイン)
ロメロ(AZ/オランダ)

DF:
サバレタ(エスパニョル/スペイン)
モンソン(ボカ・ジュニアーズ)
ガライ(レアル・マドリー/スペイン)
ファシオ(セビージャ/スペイン)
アコスタ(セビージャ/スペイン)
ブルディッソ(インテル/イタリア)

MF:
ソサ(バイエルン/ドイツ)
バネガ(バレンシア/スペイン)
ガゴ(レアル・マドリー/スペイン)
リケルメ(ボカ・ジュニアーズ)
マスチェラーノ(リバプール/イングランド)

FW:
メッシ(バルセロナ/スペイン)
アグエロ(アトレティコ・マドリー/スペイン)
ラベッシ(ナポリ/イタリア)
ディ・マリア(ベンフィカ/ポルトガル)
ボナノッテ(リバープレート)


多くの人が驚いたであろうこのメンバー構成。私の驚きは3つあった。


まず1つは、大体の読者の皆様も同じ驚きと思うが、赤文字の3選手、。“リケルメ”、“マスチェラーノ”、“ブルディッソ”である。彼らはOA(オーバーエージ)枠の選出である。この実績十分の3人の名前を見ればアルゼンチンが本気で金メダルを取りに来ていることが容易に想像できる。OA枠招集で大久保、遠藤のレベルで騒いでいる日本からしてみれば、こんな贅沢な人選はまさに反則ものであろう。それにしても、まさか“リケルメ”とは・・・。もう、「まったく、そこまでやるか?」という感じである。


2つ目の点は、メッシ、アグエロといった所属クラブでバリバリのエースたちが、U-23の正規枠であるという事実である。日本の北京五輪代表でA代表はおろか、所属クラブでエースと呼べる選手がいるだろうか?A代表経験のある内田、本田、安田、長友といった選手はいるが、相手は世界のメッシと、その後継者といわれるアグエロである。幾ら人材の宝庫と言われるアルゼンチンといえども、正直ヤバ過ぎる。


そして3つ目。選出された18名のうち、何と15名が欧州のクラブ所属という点である。しかも、国内組のうち1人はバルサはでは不遇であったが、ビジャレアルで絶対君主として、クラブを欧州レベルに引き上げた“あの”リケルメである。FWのボナノッティという選手も只者ではない。リーベル所属の彼はその才能をメッシと比較され、現在欧州で1000~1200万ユーロの評価をされているというから、欧州での活躍の日も近い。もう1人のモンソンも記録を見ると“世界のボカ”でレギュラーを張っているDFのようだ。日本にもオランダで2部落ちの本田、セルチックでゲームに出られない水野、フランス2部のグルノーブルからとっくに帰国した梅崎と“欧州組”はいるのだが、比べることすら自虐的な行為である。


1つでも十分に驚くような点が3つあるのだ。驚かない人はいないだろう。噂ではブラジルはロナウジーニョが出るかもしれないし、オランダもマカーイの名前が上がっている。これから、まだまだいくつもの驚きが出てくるだろう。EURO2008に出た欧州の選手達は北京には行かないだろうが、南米やアフリカからはビッグネームが出てくるであろうし、欧州だって代表から漏れたベテランを始め、出たくて仕方がない有能な選手達は幾らでもいるだろう。


一方で、得点より反則の方が多い大久保に拒否され、頼みの職人・遠藤は体調を崩して合宿にも参加できないという苦悩の“反町ジャパン”。今のメンバーなら明らかにOA枠を使った方が戦力は上がるだろうが、上がったところで勝負にならないのは目に見えている。EUROで我々はA代表レベルでの欧州各国との歴然とした差を見せ付けられたばかりだ。だから私は提案したい。ここは一つ、五輪でメダルなんてアホらしい期待は持たないで、北京を若手の“武者修行”の場としたらどうだろう。北京五輪なんぞ、捨てていい。次のA代表を目指す若い選手達が、先輩に頼ることなく、自分達だけで同世代の世界、そして世界トップレベルのOA枠選手達と闘うのだ。たとえ勝てなくとも、世界との距離を肌で実感できる。


一昔前と違って、生きのいいプロの若手にとってはその才能を売る“市場”となり、W杯を手にした強豪国がまだ手にしていない金メダルを真剣に奪いに来る大会となったオリンピック。まだ何も手にしていない日本にとって、そんな“利用方法”もあるのではないだろうか。いや、むしろ中途半端なOA枠を使ってお茶を濁すようならば、その方がよっぽど価値がある。明日の日本サッカーのために・・・違いますか、川淵さん。


魂のフーリガン