朝、目が覚めた瞬間
彼女は思う。
「今日こそ
潜在意識が書き換わってるかもしれない。」
と天井を見つめながら……
しかし
彼女の かなりの 努力量も虚しく。
今日も今日とて。
潜在した御意識様は お目覚め無し。
彼女は悪態を付きながら言いたくなる。
……何も起きてない。
……何も変わらない。
……おいっ!Mr 意識 潜在 さんよぉ
……何も起きないのが 逆に素敵だわ。と。
天井は天井のまま。
朝の光は光のまま。
財布の中身は、昨日のまま。
「潜在意識、変わった?」
と問いかけてみたが、返事はない。
そりゃそうだ、意識に声帯はない。
おまけに姿形は1度も見たことがない。
かなりシャイなのだろう。
彼女はため息をつきながら
“ 潜在意識が変わると奇跡が起きる ” という
言葉を思い出す。
彼女はまた思う。
——奇跡って、そんなに安売りしてたっけ?
外に出ると、風が吹いていた。
その風は、潜在意識の変化とは関係ない。
ただ気圧と気温と地球の自転の都合で吹いている。
「現実って、コッチの都合考えないよね。
ホント。そういうとこあるよね。
付き合ったら
そこそこ苦労するタイプの男みたい。」
と彼女はしみじみ思う。
でも、歩きながら気づく。
昨日より少しだけ。
歩幅が広い。
背筋が伸びている。
心なのか、頭の中なのか、少し心地良く軽い。
コンビニで買うコーヒーを
“ 安いから ”
じゃなくて
“ 飲みたいから ” 選んでいる。
潜在意識が変わったかどうかなんて分からない。
でも
選択が変わったのは分かった。
行動が変わると
世界の見え方がちょっとだけ変わる。
「これ、潜在意識の変化って言われたら
まあ…そうかもしれないけど…
もう…そんなのどうでもいいわ。」
彼女はコーヒーを一口飲んで
ふっと笑った。
“ 意識が変わったかどうか ”
なんて測れないけれど
“ 今日の自分が昨日よりちょっとマシ ” なら
それで十分じゃない。
奇跡は起きてない。
でも、選択は変わっている。
それは地味で、静かで、でもきっと確実な前進。
「潜在意識が変わるとシンクロが起きる」?
「急にお金が舞い込む」?
「急に運が良くなる」?
彼女は空を見上げて言った。
「潜在意識が変わったかどうか
なんて分かるかっ
でも
今日の私は昨日よりちょっと強いんだわ!」
また、風が吹いた。
それも奇跡じゃなくて、また、ただの風。
でも
彼女の頬には
昨日より少しだけ前向きな熱があった。
その熱は
彼女の “ 潜在意識が変わった ” からなのかどうかは分からないし、どうでもよい。
しかし、彼女の
・習慣が変わった
・選択のクセが変わった
・情報の拾い方が変わった
・行動の量と方向が変わった
のは確かである。
こういう
“ 現実のレバー ” が動いた結果として
“ 外側の出来事 ” が変わって見える。
「奇跡は信用できないが
繰り返しは裏切らない。
奇跡を待つ人生をやめた瞬間
現実はちゃんと仕事を始める。
運命は信じなくていい。
習慣だけは
必ず利息をつけて返してくる。」
潜在意識は画数が多いです。
魑魅魍魎は画数がもっと多いです。
