東京電力福島第一原発事故に伴い帰還困難区域となっている福島県内の山林で、幹が上に伸びていない生育異常のモミの木が見つかったとの調査結果を放射線医学総合研究所などのチームが28日、英科学誌サイエンティフィックリポーツに発表しました。空間線量が高い場所ほど伸びない木が多い傾向があり、放射線が影響している可能性があると指摘しています。

 放医研が調査したのは今年1月。第一原発から3・5キロの大熊町(毎時33・9マイクロシーベルト)と、8・5キロと15キロの浪江町の2カ所(同19・6マイクロシーベルトと同6・85マイクロシーベルト)で、放射線の影響が少ないとみられる茨城県北茨城市(同0・13マイクロシーベルト)のモミ(それぞれ111~202本)と比べました。
 モミは本来、毎年幹を上に伸ばし横に2本程度の枝を出しますが、調査の結果原発から最も近い大熊町ではほぼ全てにあたる97・6%のモミに、幹の先端の「主幹」と呼ばれる芽がありませんでした。また浪江町の2カ所ではそれぞれ43・5%と27%に、北茨城市でも5・8%の木に同様の生育異常が見られたということです。



生育異常を起こしたモミの木。まっすぐ上に伸びるはずの「主幹」がない=放射線医学総合研究所提供


環境省が2011年度から実施している野生動植物調査では、約80種の生物を調べた結果モミ以外で異常は見られないと報告されていますが、針葉樹は放射線の影響を受けやすいことが分かっており旧ソ連・チェルノブイリの原発事故後にはヨーロッパアカマツなどでも同様の異常が見つかっています。
 チームは「放射線との因果関係やメカニズムを解明するにはさらに研究が必要だ」と説明しています。



正常なモミの木=放射線医学総合研究所提供