「キミのとなり」
『行こうか』
「うん」
夏の陽射しの中で
あなたが優しく笑う。
彼との出逢いは
4ヶ月程前のこと。
会社の飲み会で
ひどく酔っていた私は
帰り道、だんだんと
意識が朦朧としてきて
今にも倒れそうだった。
彼氏に振られて
馬鹿飲みしたからだ…
春から新しい部署に変わり
更に追い討ちをかけるように
彼氏に振られた私は
つい飲み過ぎてしまったのだ。
それでもよろける身体を
僅かに残る意識で
動かそうとしたけど
目の前が真っ暗になって
あぁ…もうダメだ…
危うくその場に
倒れそうになったその時、
『大丈夫?』
誰かに支えられた。
意識が遠のいて
顔が良く見えない…
そのお兄さんは私を
タクシーに乗せて
『お家、どこですか?』
「3丁目の…」
『運転手さん
今の住所までお願いします』
ごめんなさいって
言おうとしたけど
私はそのまま眠りに
落ちてしまった。
『着きましたよ』
どのくらい寝ただろう?
私の家に着いた頃には
少し酔いが覚めていて
お兄さんの声が
はっきりと聞こえた。
「ごめんなさいっ!」
寄りかかっていた頭を
急いで退ける。
彼はニッコリ笑うと
私を先に降ろして
運転手さんにお金を払った。
「ご迷惑おかけしてごめんなさい。
お金払います」
『いいですよ』
「いや、それは駄目です!
払わせて下さい…!」
財布に入っていたお金を
少し多めに渡す。
『いいのに』
「本当に迷惑かけたので…」
『迷惑なんかじゃないですよ。
僕がやりたくてやった事なので⌒▽⌒』
あれ?
日本語のイントネーションが
少し違う…?
ここでやっと私は
彼が日本人ではないことに気付いた。
「本当にありがとうございました」
『もう大丈夫ですか?』
「はい、もう大丈夫です」
『ゆっくり休んで下さいね。
それじゃあ…』
この時私は
何を思ったのか
「あ、あの!」
『はい』
「今度お礼させて頂きたいので
良かったら連絡先教えて
頂けませんか?」
『連絡先…』
「そ、その…嫌だったら別にっ」
『携帯貸して下さい』
「?」
言われたまま携帯を渡す。
あなたはそのまま
何かを打ち込んだ。
「はい。僕の番号に
かけておいたので、
それ登録しといて下さい」
これが彼との始まり。

