ビーバップ城東のテル オフィシャルブログ「与太郎外伝」Powered by Ameba -4ページ目

与太郎外伝 第一章 6

テルだ!知らせずにすまなかったが…先週は、著者の名和 広 氏が急病で…休刊を頂きました!ごめんなさい。
年の瀬になってきたな!
今年はどんな年だったのかな?
来年はどんな年にしたいのかな?
どうぞ、素敵な年末を…

さて、続きをどうぞ…

~・~・~・~・~・~・~・~・~

この時、光浩らは、全てが静止していたかに感じた。

森羅万象全てが止まり、周囲一体が真空状態になったかのように思えたのだ。

たが、そんな静止状態を破ったのは、光浩のくぐもった声だった。

「みんな、チャリを下に捨てろ!」

光浩に言われるがままに、それぞれが橋梁下の歩道へと、自転車を投げ捨てた。

その刹那、大きなクラッシュ音が列車の汽笛とともに静寂の闇を引き裂いた。

列車は、前方5メートルまで迫って来ている。

「よし!柱に掴まるぞ!」

悪ガキどもは、橋梁の鉄柱にと、精一杯の力を振り絞ってしがみついた。

光浩らの僅か横1メートルを列車がけたたましい音を立て、横切って行く。

列車はまるで大型の肉食恐竜の如し迫力で、その風圧に悪ガキどもは橋梁下に吹き飛ばされそうになった。

しかし、列車は横浜方面へと去って行き、列車の前照灯もムギ球のように小さくなり、やがて闇夜に消えていった。

「おい! みんな無事か?」

光浩が全員の安否を確認する。

「お・おう、俺は無事だよ…」

「俺もだ…」

「俺も…」

「ハハハ、なんてことはなかったな」

全員、九死に一生を得て、余裕の態度を見せるも、顔色は未だ蒼白のままだった。

光浩らは、気を取り直して、再び、目的地・平沼に向かって歩いて行く。

「俺達のチャリ、大丈夫かな?」

悪ガキ仲間の一人が不安そうに、そう呟いた。

「大丈夫だろ。夜中に壊れたガキのチャリ盗む大人はいねぇよ」

どこまでも、ポジティブな光浩だった。

光浩らが九死に一生を得た戸部橋梁からは目と鼻の先で、先程の恐怖体験を取り留めもなく語り合っているうちに、
念願だった平沼の廃虚ホームが視界一面に広がった。

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列車の窓越しではない、リアルな廃虚ホームの異様さに光浩達は圧倒された。

異様というよりも威容といった方がいいかもしれない。

相対式のホームに二面二線を有する高架駅というのは、見慣れた光景だったが、両ホームには、線路を跨ぐ格好で、アーチ状の鉄骨上屋の残骸がそびえ立っていた。

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だが、残骸とはいえ、歴史の重みのような荘厳さをその鉄骨上屋から、この時光浩は感じたという。

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「この屋根みたいな鉄骨、一体なんだろう?」

不思議に思いながらも、階下へと懐中電灯片手に下っていく。

もはや、腐食しているのだろう。足を踏み入れる都度、階段のコンクリートはボロボロ崩れ落ち、光浩らをたじろがせた。

「おいおい、こんなボロ駅の下敷きになってお陀仏になりたくねーよなぁ」

「今地震が起きたら一発でオジャンだぜ!」

それぞれが思い思いに悪態を付き、笑い合っていたその時だった。

「お前ら、ここで何してるんだ!?」

ドスの利いた声が光浩達に投げ掛けられた。

その瞬間、悪ガキ全員の心臓が止まったかに見えた。

だが、勇気を振り絞り、恐る恐る声の主がいる方角に振り向いた時、光浩らは戦慄した。

つづく…

※この物語は、限りなくノンフィクションに近い、フィクションである。

著 名和 広