与太郎外伝 第一章 8 | ビーバップ城東のテル オフィシャルブログ「与太郎外伝」Powered by Ameba

与太郎外伝 第一章 8

テルだ!そろそろ正月気分も抜けてきた頃かな!?今年も、バッチリやりましょう!
夜露死苦哀愁!!
それじぁ続きをどうぞ!!

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革命家と名乗った大男は、突然光浩らに話を振った。

「ところで、お前達、さっきは自由研究がどうのこうの言ってたよな。その自由研究と夜中にこんなとこに入って来るのと、どう関係があるんだ?」

嘘を附いても仕方ない。

というか、嘘を附いたところで、この男には、全てを見透かされるのではないかと、心の中で観念した光浩は、正直に語り出した。

「上に走ってる京浜急行に乗ってると、人のいない無気味なホームが見えるもんで、前々からずっと気になっていたんです…。だから、俺達、誰もいない真夜中を見計らって、探検しに来たっていうか…」

先ほどまで、光浩に対し、饒舌に語りながらも、どこか強張った表情を浮かべていた大男の顔が若干安堵したかに見えた。

「ハハハ、なんだ、そんな理由か…」

そう笑うと、大男は立て続けにこう語った。

「ここは、昭和6年から終戦直前まで存在していた平沼という京浜急行の駅の跡地だよ」

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「へぇ、やっぱりそうだった!」

「でも、なんで、場所的にも便利そうなこんな駅が潰れたんです?」

光浩並みに好奇心の強い小野田芳雄が訊ねた。

「その頃は、戦時中だろ。ここも米軍に爆弾を落とされたんだよ。ほら、ホームの上にある鉄骨の屋根を見ればわかるけど、まるで広島の原爆ドームみたいだろ?」

光浩らは、「確かに」と思った。

二つのホームを跨がる鉄骨上屋を見た時、確か社会の教科書からであろう擦り込まれた原爆ドームの光景を、その時思い出していたからだ。

大男は、若干面持ちを変えつつ、尚も続けて語り出した。

「戦争はあってはならない。でもな、お前達子供が結婚して、これから先子供が生まれた時、その子供達が幸せに生きる権利が奪われてはならないんだ!」

突然強まった大男の口調に光浩らは圧倒され、言葉が出なかった。

「とにかく、この国を根本からひっくり返さなくてはならない。俺はそのために戦っているんだ!」

そういうと、大男は、再び柔和な表情へと変わった。

「でも、お前達を巻き込むわけにはいかない。それにここは危ない。今日はもう遅いから帰りなさい」

「で、でも…」

「いや、親御さんも心配する。帰るんだ!」

有無を言わせない大男の迫力にたじろぎ、光浩らはしぶしぶ大男の命令に従った。

大男は、崩れかけの階段を登り、光浩達をホームまで送っていく。

「ホントは、危ないから、お前達をひとりひとり送ってやりたいんだが、色々とまずいこともあってな。ここまでしか送れないけど、勘弁してな」

「いえいえ、そんな…」

光浩らは、虚を衝かれた想いで、先程来た線路の道をトボトボと歩き出した。

「あのオッサン、革命家とか「あしたのジョー」だとか、おかしなことを言ってたけど、何者だったんだろう?」

「さぁ?」

今まで経験したことのない虚脱感に見まわれながら、先程自転車を投げ捨てた戸部橋梁にたどり着いた。

光浩達は、無人の戸部駅男子用トイレの窓を開け、京急の敷地構内から無事脱出を試みた。

光浩らが投げ捨てた自転車は、戸部駅改札裏の路上に転がっていたが、若干ハンドルが曲がっていたり、テールランプが破損していた程度で、目立った損傷はなかった。

気を取り直し、帰路へと向かう光浩ら一堂。

夜の帳が開き、東の空が白み出した頃、光浩らは、国道1号線沿いにある高島交番の前を、若干不恰好になった自転車を走らせていた。

すると、その時だった。

小野田芳雄が鈍器で後頭部を殴打されたかのような、衝撃に満ちた声を荒げたのは!

「おい! どうしたんだよ! 芳雄」

長い一日にほとほと疲れ果てた光浩らは、怪訝そうに芳雄に問い掛け、芳雄の指差す掲示板に目を向けた。

「嘘だろ!」

交番の掲示板に貼られていた凶悪犯人の手配写真の男が、何と、先程出会った大男と瓜二つだったのだ。

その手配写真には、こう記されていた。

「警視庁指定重要指名手配被疑者」

光浩らは、一気に血の気が引いていくのを、その瞬間、はっきりと意識していた。

つづく…

この物語は、限りなくノンフィクションに近い、フィクションである。

著 名和 広