加藤先生のこと。 | bebeyanのブログ

加藤先生のこと。

加藤周一先生が亡くなりました。89歳でした。

十数年前、大学4年生の時に半期だけ加藤先生の講義を受講していました。

本居宣長の「玉勝間」とヴォルテールの(多分)「哲学書簡」を順々に読み進めていき、加藤先生が解説し学生と意見交換をするというゼミ形式の講義でした。

先生は、宣長を「宣ちゃん」、ヴォルテールを「ヴォルちゃん」と親しみをこめて呼んでいました。

講義室には終始笑いが溢れ、毎回講義に出るのが楽しみでした。

それは、先生の諧謔に満ちた話術だけではなく、やさしい人柄がなせる業でもあったと思います。

残念なのは、先生が教授してくれた内容をきちんと吸収できなかったことですが、それでも印象に残っている話がいくつかあります。

宣長のところで大和魂の話になったのですが、宣長がつかった大和魂の定義はもののあわれを感じる心であって、これは戦時中の日本でつかわれた言葉と全然違う意味であるというような話がありました。

先生が日本文化に拘っていたのは、戦前に軍国主義に雪崩をうって流れた日本社会を理解し、それとは異なる社会に役立つものをこれまでの日本文化の中から引き出そうとされていたからだろうと思います。

晩年は九条の会をよびかけられて、あるべき知識人としての姿を示されました。

楽しかった講義のことを思い出すと、先生は知性とやさしさが両立するということを身をもって示されたのだと思えます。

そういう意味では、あの半期の経験は私にとって宝物です。