7月31日の繊研新聞に寄稿しました。転載します。

今回は合作で執筆しました。
「女性潮流研究所の研究」「社外研究員のコメント」を敏腕研究員N松が抽出して私が新聞っぽい文章にまとめました。


「モノからコトへ」から「コトからヒトへ」

女性潮流研究所(www.beauty-brain.com )では、「気分トレンド」を観測・分析し、次なる潮流を見つけ出す活動をしている。今年からは、広告代理店、精密機器・トイレタリー・化粧品など、大手企業の2,30代の現役女性プランナー数名を社外研究員として迎え、パワーアップ。ビジネスに実践的に役立つトレンド分析に力を入れている。このコラムでは、女性潮流研究所の2012年上半期の女性の気分トレンド分析から、見逃せない点についてご紹介したい。

東日本大震災から1年あまりが経った。震災後の非日常の空気は徐々に薄れたものの、女性たちの消費意識はあきらかに震災後とは変わっている。社外研究員へのアンケート調査によると「震災後、節約をしなければという“義務感”のようなものから、お金を使わない、モノを持たないという価値観が当たり前になった。むしろ本当に価値あるもの、費用対効果の得られるもの以外にお金を使うことが、“ダサイ”と思うまでの価値観になってしまった」(広告)。「震災前は、ふわっと夢見ていてもどこかなんとかなる感じだった。震災をきっかけに、地に足をつけた上で端正・現実的・論理的なことを重要視するようになった」(トイレタリー)とあった。

今の広告や物作りのビジネス現場では、消費者のこのような目線を意識した企画が行われているのだ。

キラキラした理想より「身の丈+0.5歩先」の現実感

昨年まで、女性の憧れ像は、平子理沙や梨花に代表される、ふんわりとしたガーリー、ベビーな年齢不詳の非リアルな存在だった。しかし、最近では、生活感のあるリアルな女性像に移っている。30代女性向け雑誌「Grazia」(講談社)はリニューアルを行ったが、コアターゲットを「キャリアウーマン」から「ワーキングマザー」にシフトした。創刊号の表紙には「せわしなくって、幸せな『働く母』を生きていこう!」という文言が大きく掲げられている。

「せわしない」というファッション誌には不似合いな生活臭溢れることばが新鮮だ。そう、今、女性たちから求められるのは手の届かない存在ではなく、「身の丈+0.5歩先くらいのリアル」だ。その結果、女性マーケットでは従来とは違った分野が盛り上がり始めている。従来、女性が自分をグレードアップするためには、ジュエリーやバッグ、あるいは結婚や資格を求めるなどが定番だった。

今は、「スポーツ」と「インテリア」が、その大きな役割を担いはじめていることに注目だ。スポーツはダイエットだけではなく「心身の鍛練」のため、インテリアは生活の場ではなく「自分キャラクター」の象徴という新しい意味を持ちはじめている。自分の肉体や暮らし方という生身をアップグレードによって、「0.5歩先の自分」を実現しているというわけだ

SNSが女性の気分トレンドもたらす影響とは?


昨年から急速に普及し始めたfacebook、twitterなどSNS(ソーシャルネットワークサービス)の影響も「0.5歩先のリアル」が求められるようになった大きな原因といえそうだ。

SNSは、ネットというバーチャルなシステムでありながら、同窓会、趣味の集まり、ボランティアから社会的な問題に取り組む大規模デモまで、リアルなつながりを提供するきっかけになっている。興味深いのは、6月末~7月初旬の女性誌にはSNSに警鐘を鳴らす記事も増えていた点だ。「本当の怖さを知っていますか? 実は根深い、SNSトラブル報告!」(anan)、「フェイスブック、ツイッター… 今どきツールに意外な落とし穴 SNSトラブルにご用心!!」(SPRiNG)。今まではポジティブな記事がほとんどだったが、ネガティブな記事が現れるようになったのは、単なるブームを超えて定番化した表れといえる。

SNSでは、「色々な他人の目線」が大きなファクターとなる。自分の現実の姿を知っている人間に過剰に自分を飾り立てる書き込みを見られたら、「背伸びの嘘」が明らかになり気まずい思いをする。Facebookでは、今だけではなく、昔から自分のことを知っている友人にどう思われるか?も気にしなくてはならない。「自分の人格をどう持つか?」ということを、今までにないほど思考する必要が出てきたのだ。前述の「身の丈+0.5歩先」という、嘘にならない範囲の理想像を目指す必然性はここにもある。

SNSの普及により、他人に「つっこまれたい」「褒められたい」ということを前提にした消費行動をすることが多くなっている(イラスト「つっこまれ待ちソーシャル女子」参照)。男性誌の「R25」の柿崎隆編集長は、年初に行われた2012年トレンド予測発表会「今年は“ネタおすそわけ消費”」とコメントしており、性別を問わない大きな潮流なのだ。

ビジネスの世界では何年も前から「モノからコトへ」と言われている。女性潮流研究所ではさらに、「モノからコトへ」の次のステージとして「コトからヒトへ」にシフトしてきていると考え、下半期も特に注目したい。


※実は・・・
掲載誌をみたら、大タイトルが誤植でした(白目)
モノからコト→コトからモノになっていました!!!!!!!!
コトからさらに進んで人目消費が加速していることが新しいのに~~~~~