姉 弟 | 「窓辺の風景」 ・・・喜・想・哀・楽  

「窓辺の風景」 ・・・喜・想・哀・楽  

かけがえのない大切な時の流れ・・・
心の窓を開いて望む一瞬の風景を、優しい言の葉で綴ります。


台風一家・・・・、いや台風一過(笑)  九州北部は直撃は逃れたものの、けっこう強い風雨の中

海沿いの都市高速を走る際には、ちょいとゾクッとしましたよ。車ごと吹き飛ばされたらどうしよう~って あせる

今朝は青空が拡がっています。大量の洗濯物が、気持ちよく乾きますように ♪


先日担当させていただいたご葬儀は、久しぶりの神道でした。宮司様はとても温和なおじちゃん(笑)で

「そちらに合わせますよ!」と言ってくださり、ありがたいかぎりです。ただ、以前にもご一緒した経験が

あるのですが、場面ごとにかける雅楽のCDを4枚お預かりしますので、司会台での音響操作には

ちと気を使うのであります(汗) なんとか無事に務め上げることが出来てホッとしました~~。

ご存知のとおり、仏式のご葬儀では焼香ですが、神道では玉串奉奠(拝礼)です。一般会葬者の中には

仏式だと思っておいでになり、雰囲気の違いに戸惑われて緊張される様子も見受けられますが

雅楽の流れる中、玉串を捧げて「二礼二拍手一礼」の動きには、いつになく空気が張り詰めているような

印象も感じてしまいます。

故人は70代後半の女性。喪主をお務めになられたのは、すでに嫁がれたご長女で一人娘さんでした。

お父様も数年前にご他界されたとのこと。お手伝いなさるご親族の姿は多かったのですが、通常であれば

ご一緒に話に加わってくださるはずの、ご主人らしき存在も見当たりませんでした。

喪主との打ち合わせを始めると、お預かりする弔電を持ってきてくれたのは、女子高校生のお孫さんで

その後ろにはチョコチョコと可愛らしい、5~6歳の男の子がくっついて来ていました。

お孫さんから電報の束を受け取り、代読の順番やお名前の確認も終わり、玉串奉奠の際の指名について

話を始めると、喪主の表情も少し和らぎ、前夜の通夜祭ではちょうど玉串奉奠の頃に、男の子は椅子に

座ったまま寝てしまい、終わるまで起きなかったとのこと。ですから、(今日の)告別式では眠らないように

気をつけて、喪主と一緒に母子3人で進むようにしたいと、笑いながらおっしゃいました。

必要事項の確認を終えたあとで、お母様(故人)のことに話が及んでも、あまり多くを語りたがらないような

ご様子でしたから、それ以上をお聞きすることなく、「なにかございましたら、お声かけください。」と結んで

私は席を立ちました。

担当者からは、事前に故人に関する情報(死因や配偶者の存在など)は聞いていましたが、喪主の方に

ついては聞きそびれており、打ち合わせの後で伺ったことは、実は数年前にご主人も亡くされているらしく

悲しみの深さは大きいけれど、あまり感情を表に表わされないタイプの方のようだとも聞きました。

そして、そんなお母様の状況を理解してか、高校生のお嬢さんがちっちゃい弟くんのお世話を担って

いろいろと助け合いながら、暮らしていらっしゃるのだろうなと感じました。

式が始まり、静寂な中で独特な奉上が続きます。ふと、ご遺族の席に目を向けると、喪主の隣の席に

座る弟くんは、もうすでに夢の中 ぐぅぐぅ お姉ちゃんが横で、身体が椅子からずり落ちないようにと

支えてくれています。玉串奉奠になっても起きる気配はなく、前夜同様、まず喪主が進まれ

代わってお姉ちゃんが一人で進み、ご親族が続いていきました。しばらくすると、人が動く気配に気づき

彼が目を覚ましました。すると、親族の列に混じるように、お姉ちゃんが弟くんの手を引いて並び

玉串を受け取って、いよいよ彼の番となりました。

弟君は、隣の男性がしている所作を真似るように、玉串をくるんと回してそ~っと乗せました。

さあ、それからどうする? 彼の真後ろに立って付き添っていたお姉ちゃんが、後頭部をツンツンと

2回つつきました!彼の頭がコクンコクンとお辞儀をします。そしてお姉ちゃんが両手を回して

小さな掌が合わさるように二拍の動きを誘ってあげました。そしてもう一度、頭をチョンとこつくと

コクンとお辞儀をして、無事終了!! 弟くんはお姉ちゃんを見上げて「ちゃんとできた?」とでも

言いたそうにニコッと笑って、お母さんのもとへと戻っていきました。なんとも微笑ましい光景(^^)

斉主退下ののち、甥にあたるご親族の男性が代表謝辞を述べられ、特にいろいろとお聞きしたわけでも

なかったのですが、気丈でお世話好きなお人柄だったという故人への哀悼の言葉を、少しだけ添えて

閉式へと繋げていきました。それまで平静を保っていらした喪主も、その時ばかりは涙をぬぐうお姿が

あったといいますから、きっと胸の中に募る思いは大きかったに違いありません。

ご出棺を見送り、式場の片付けをしながら、私同様に彼の動作を微笑ましく見ていたスタッフも多く

悲しみの中にも心がホッコリと温まるシーンがあってよかったねと、話し合いました。

時には賑やかなチビッコ軍団が、式場を走り回ったり仏具をカンカン鳴らしたり、はたまた司会台の

機材に興味を持って囲まれたりと、「保護者はどこ?」とブチ切れそうになることもありますが^^;

お子さん達にとっても、命の大切さやはかなさをしっかりと教えられる場であってほしいと思いますし

大人でさえもそれほど慣れない非日常空間ですから、緊張感を味わいながらも、人生最期の儀式を

共につくる気持ちで集まっていただきたいものです。

あのちっちゃい男の子が、いつの日か母と姉をしっかり支える、頼もしい存在に成長することを

願っています。 二礼(ツンツン)二拍手(ポンポン)一礼(ツン)・・・ヾ(@°▽°@)ノ