早く行って、ネットで見たあのカフェでランチして、それからチェックインの時間まで近くの美術館に行って……とか、ウキウキして考えてたから最初はちょっとだけがっかりしたけど、
普段見られない仕事中の顔のカズをみてたら、なんかこんなのもいいなって思い直した。

出来るだけカズの邪魔にならないように、カズんちの本を読んだりスマホを見たりして過ごす。


昼ごはんに簡単にパスタを作ったら、

『嬉しい、じゅんくんのスパゲッティ久しぶり』

て笑うから、なんか照れた。




そんな時間を過ごしてから車で移動してきたから、
山の中の街に着いたのはもう夕方が近くて、
おかげですぐチェックインできたんだ。









「さ、何する?」

カズがこっちを見て言う。
行きたいとこは山ほどあるけど、
そういうのはとりあえず明日でいいや。




テーブルの上にあった、宿のパンフレットを眺めながら、露天風呂、すげー!景色、やばっ!なんて言って、
すぐ近くで微笑むカズの頬を手のひらで包んで、もう片方の腕でぐっと首の後ろを引き寄せる。


唇を重ねれば、一瞬驚いて硬くした身体の力を抜いて身を委ねてくれた。




ちゅ、ちゅ、って小さく聞こえるリップ音に薄くカズの吐息が交じる頃には、腕の中でふにゃふにゃになって、頬をほんのり赤くする顔がかわいい。



「ちょっと、まって……」

「待てないよ、せっかくの二人きりなのに」



ああもう、ただでさえ水分量の多い瞳をうるうるさせて上目遣いするの、ズルいよ。

たまんないじゃん……。






そっと、カズのからだを畳の上に横たえた。


「すきだよ……」


そのまま上から覆いかぶさるみたいにして、耳元で囁く。


「や、もう、じゅんくん、何急に」

「だって、言いたい」

「もう………ばかじゃん」





目の前の耳が真っ赤で、熱い。

俺は思ったことをすぐに言いたい方だから、こうやって口に出してしまうんだけど、
そのたびにカズはすぐ照れて恥ずかしがって、
でもそんなところがかわいくて、見たくて。
俺の中の少しのSっ気が擽られる。

だから、仕方ないよね。
カズが俺をこうさせるんだから。







耳をカプッと咥えれば、ひゃっ、て声と共にからだが震えた。

耳の中に息を吹きかけるように舐 めたらピクピクする。


「ん……、はぁっ……や、だあ、」


音に弱いってわかってるから、わざと音を立てて耳を攻めると、やっぱりゾクゾクするみたいで、
小刻みに揺れるからだを抱きしめたまま、そっと手をシャツの下に差し入れた。
すべすべの肌の感触が気持ちいい。



「や……、じゅ、だめぇ……」

「カズ……かわいい……」



ふたりの吐 息が絡まって、なんだか部屋の空気の色まで変わってるみたいだ……


耳から離れてもう一度、唇へ。
深く重なって口付ける。


敏感な胸の突 起をピンと弾けば、重なった唇の隙間からくぐもった声が聞こえる。



「んっ、んっ……ぅうんっ…」

「カズ……いい?」




返事も聞かないまま、俺は反対の手をそーっとカズの下の方へ伸ばした………








Trrrrrrrrrrr!!



突然の電話のベルにドキッと飛び跳ねた。
部屋の電話が鳴っている。


「あっ、電話!」

そのすきにするっとカズが身体の下から抜け出て、電話へと走ってしまって。

くそっ。





「なんか、夕飯の確認だって。」

「そっか……。あー!いいとこだったのに!」



電話を切ったカズに、大げさに悔しがってみたら、けらけらと笑った。
可愛かったから……ま、いいか。


正直………すっげえ残念だけど!