(side O)






目が覚めたら、目の前にしょーくんの寝顔。






目覚ましをかけずに眠れることにもすっかり慣れてきたこの頃。

前は早かったり遅かったり……不規則だったせいか、いまいちスッキリしなかったのに、
今は自然とおんなじような時間にすっと目が覚めるようになった。




なんかこーいうの久しぶりだな。って、すうすうと寝息を立てるしょーくんの顔を見ながら
寝ぼけた頭で思う。








嵐をやすんでからなかなか会える日が少なくなった。
だって、ただでさえしょーくんは年明けから、なんならあける前から新しい番組の準備や撮影があったし、
それからすぐドラマの撮影も始まって、とにかく忙しそうだし、
それだけじゃなくてそもそもおれのこと、ゆっくり過ごさせてやろうって考えがあるみたいで、
不必要に会おうなんて言ってこないんだ。


しょーくんはやさしいし、いつも先回りしておれや、他のやつのことを考えたりする。
そこが好きなとこでもあんだけど、
ちょっと……寂しいときもある。


構われすぎてもめんどくさいけど、ほっとかれても寂しい。おれってわがままかな。






そんなこんなでしばらく会えてなかったんだけど、
いいかげんおれも限界になって、電話した。


最初は世間話して、最近何してるか話して……


そうしたらなんかさ、しょーくんの声がさ。
寂しいよって言ってる気がしたんだ。
寂しいよ、会いたいよ、智くん、って。
そんなふうに聞こえたんだ。




もしかしたらおれのきもちの声だったのかもしれない。
わかんねーけど。




きっとふたりとも、おんなじふうにそう思ってた。








だから、
忙しいのはわかってんだけど、しょーくんち行っていいかって聞いたんだ。


少し驚いて声をつまらせて、それでもすぐに「もちろん!」て言ってくれた。


だからさ、スマホと財布だけ持ってすぐ駆けつけた。


しょーくんは、迎えに行くよって言ってくれたけど、
そんときはおれ、もうタクシー捕まえてて。


「早っ」てビックリして笑う声がもう、たまんなくて。
タクシーん中で走り出したい気分だった。






そんなおれの気持ちが通じたのか、タクシーはスムーズに街を通り抜けて、
思ったよりも早くしょーくんちのマンションまで着いた。







久しぶりに来たしょーくんちは、基本、なんにも変わってなくて。
ドアを開けたときに見えたしょーくんの笑顔も、なんも変わってなくて。
「久しぶり、智くん」て笑って……


思わず、玄関でぎゅって抱きしめた。


「なに、どうしたの、いきなり」


笑いまじりの掠れた声がおれの前髪にかかる。
どうしたの、なんて言いながら、おれの背中にまわったしょーくんの手にぐっと力が入った。



あーー……、しょーくんのにおいだ………



もうシャワー浴びたんだろな。風呂上がりの匂いがする。
しょーくんが気に入って使ってるボディーソープ。
まえにおれたちにもくれたやつ。
気に入ったやつはすぐメンバーにもくれるんだ。
でも、おんなじやつを使ってても、みんな同じ匂いにはならない。
しょーくんならしょーくんの匂いが混ざって、しょーくんだけの匂いになる。
それが、すごくいい。


自然とおれの鼻先がしょーくんの鎖骨辺りにあたって、
おれは、胸いっぱい匂いを吸い込んだ。



「ふふ……くすぐったいよ……」



そう言ったしょーくんの声が震えてて、びっくりして顔を見た。
くりくりした、おれの好きなおっきい目に涙がたまってて、真っ赤になってて。


「しょーくん、泣いてんの……?」

「はは、なんでだろ……。智くんの顔見たら、なんか……」


照れたふうに笑ったその目から、ぽろっとひと粒雫が流れた。


「ごめん……、なんか、思ったより、智くん不足……」


泣いた顔を見られたくないのか、おれの肩に顔を押し付けた。
ぎゅって抱きしめるその手が、少しふるえてる。




しょーくんは………

かっこよくて、しっかりしてて、
番組なんかもバッチリ仕切って、ニュースなんかもやってて。

すっげえ頼りがいがあって。



だけど。
だからかな。


こんなふうにおれの前で見せる弱い姿が、なんか特別なかんじがして、
ちょっと嬉しくなる。
なんて言ったら、へんかな?





抱きしめられる上から、おれも手を伸ばして、
しょーくんの頭をぽんぽん。




「おれも。おれも、いっしょ。
しょーくん不足。」

「ん………」



しばらく、ぎゅーってくっついてひとつになって、
お互いのぬくもりを感じあって、
それから、どちらからともなく顔を上げて、キスしたんだ。












じっとしょーくんの寝顔を見る。

昨日は少し疲れたような顔をしていたけど、今はもうすっきり、幸せそうな寝顔だ。


どことなく口の端っこがあがって、寝ながら笑ってるみたい。


出会った子どもんときからずっと、
しょーくんはかっこよくてかわいい。

きっと、これからも。







安心しきって眠るしょーくんの寝顔に、軽くちゅーして、
おれはもっかい目を閉じた。
ぬくもりをぎゅっと抱きしめながら。






(おわり)






______



なんかポエミーになってしまった!
おやまコンビのすきなところは、ふたりだけの信頼関係なので、
お互いに癒やし合ってくれてたらいいな、ていう妄想でした。



ありがとうございました。




_______



明日からは午後9:15(21:15)に投稿いたします。
よろしくお願いします。