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side A







リーダーがそのノートを、パタンと閉じた。


ゆーっくり、目を閉じて、目を開ける、

瞬きよりもちょっとだけ長いくらい?
そのくらいの感覚で目を開けたら、
風景ががらっと変わってた。





そこは、ホテルのリーダーの部屋じゃなくて、
メンバーもいなくて、
テーブルもソファーも飲んでたお酒もオツマミもなんにもなくて。




オレは、小さい頃よく遊びに来た遊園地に立っていた。








そうだ、そうだった。
『好きな夢が見られるノート』だって聞いた瞬間からオレは、
それならあの遊園地に行きたいなって思ったんだ。

小さい頃は家族でよく連れてってもらってた遊園地。
少し大きくなってからは友達と行ったりしてて……、

あの懐かしい遊園地にニノと行きたいなって思ったんだ。









「相葉さん?どうしたの?」

はっ、と気づいたら隣にニノが立ってて、
不思議そうにオレを覗き込む。


「ううん、何でもない!いこ!」


オレはニノの手を取って、園内を走り出した。




そこそこ賑わってる園内、
家族連れ、恋人同士、学生のグループ、
いろんな人たちがいるけど、誰もオレたちを見て騒いだりしない。
みんなそれぞれの楽しみ方をしてる。
まるでオレたちがまだ何でもない、かずくんとまーくんだったあの頃みたいに、自由に過ごせる。

んー、夢って最高!









オレたちはいろんな乗り物に乗った。

ジェットコースターはもちろん、回転ブランコにカーレース、海賊船、メリーゴーランドにフリーフォール……

どれも二人並んで乗って、ギャーギャー声をあげて、すっごい笑って。

ニノはいつもだったらぐるぐる回るのとか絶対無理って言うのに、今日は言わなかった。
むしろ、あれも乗ろ!これも乗ろ!てぐいぐいオレを引っ張った。



遊び疲れて、ちょっと休憩しよ、て座ったベンチ。
オレが買ってきたジュースを、はい、って渡したら、ありがと、てニコッと笑った。

かわいい……!

袖を手の甲まで覆った、丸っこい両手で、カップを包み込むように持ってる。

ぱく、てストローをくわえたまま上目遣いにオレを見るから、なんか……なんか、胸がドキドキした。
初めて見るわけじゃないのに、
なんか、胸が高鳴って……
遊園地の魔法にかかったみたいだ。









少しづつ陽が落ちて、夜の空気がやってきた。
昼間と夜の間くらいの、境目の時間。



子どもの頃は、この時間になると「そろそろ帰ろうか」て言われるのが寂しくて、いつも駄々をこねてたっけ。



だけど今日は……この時間を待ってた!




「ニノ、最後にあれ、乗ろ!」

オレは観覧車を指差した。










やってきたピンク色のゴンドラに二人で乗り込む。

ゴンドラの中は昼間の太陽に温められた名残でなんとなくポカポカしてた。




先に乗ったニノが座るのを見て、オレは迷って……向かい側に座った。

よく考えたらずっと隣同士で乗り物に乗っていて、こんなふうに向かい合うことがなかったから。

ニノの顔を見たかったんだ。







二人っきりのゴンドラが、少しづつ上に、上に上がっていく。

上がるごとにゴンドラの中に夕焼けが入ってきた。




「ほら、あれ乗ったよね、怖かったぁ」

「わ、あんな遠くまで見える!」



なんて夢中になって外を見てるニノの横顔にも夕日がさして、頬がほんのりと赤い。



気の早いお月様がぽっかりと浮かんでいるのが夕日の反対側に見えた。







お月様、オレに勇気を分けて!









今回の夢を遊園地にした理由。




”観覧車のゴンドラがてっぺんまで来たときにキスをすると、ふたりの愛は永遠に続く”ってジンクス。




ベタ過ぎて笑っちゃうかもだけど、現実世界では絶対できないだろうそれをオレは……どうしてもしたかったんだ。





がばっ、て立ち上がってニノの隣に座る。


ゴンドラがグラグラって揺れて、ニノが声を上げた。




「うわっ、なにしてんの、あぶなっ」

「ごめん……」




緊張しすぎて掠れた声が出た。
ごくん、とつばを飲み込んで、
外を指差してたニノの指を掴んで、引き寄せる。




















ニノの頬が、瞳が、ほんのり赤いのは差し込んだ夕日のせい?
それとも………。




ゴンドラが一番高いところまで上がって、
ふたりきり、もう、誰からも見えないね。



ニノがそっと目を閉じたのを見て、オレも目を閉じて、そうっと唇を近づけた……。












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