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唇に、濡れた感触がして目が覚めた。
いつの間にか寝ちゃってたみたい。


慣れたぬくもりに目を開けると、至近距離に翔ちゃんの笑顔があった。





「あ、起きた」

「んん…ごめん、寝てた」

「いいんだよ、遅くなっちゃったのは俺だし。ごめんな」

「今、何時?」






時間は日付を少し超えた頃で。
意外と早かったな…ってぼーっとした頭で思う。


翔ちゃんちの広めのソファーに横たわってる俺を覗き込むみたいに座ってた翔ちゃんが、ぐりぐりと俺をソファーの背もたれ側に押しながら横にピッタリくっついてきた。


腕枕するみたいに腕を差し込んで、ぎゅって抱きしめてくる。




「ちょ、なに?なになに狭い狭い」

「なあ、ニノってお姫様?」




俺の言うことなんか無視してぎゅうぎゅうと抱きしめてくる翔ちゃんはご機嫌で言った。




「なんの話?」

「だってさ…、王子様のキスで目覚めたから」

「なっ…」




ふふふ、って吐息で笑って俺の髪に口付ける。




「翔ちゃん、酔ってんの?」

「ううん、素面。完全、素」




抱きしめられたままくんくんと匂いをかいでも、酒の匂いはしない。
翔ちゃんの匂い…。汗に混じった香水の匂い。





「飲んでこなかったの?メシは?」

「合間に出してもらった弁当食って…終わってすぐ帰ってきたからさ」

「誘われなかったの?」




翔ちゃんはふふっ、て今度はおでこに唇を寄せた。