(side N)








『ごめん、遅くなる』


って、すごく短いメッセージが届いたのは、夜もすっかり更けた頃。



「でしょうね」


って俺はひとり呟いて、手に持ったスマホの画面を暗転させた。











今朝、部屋を出るときは一緒だった。一緒に過ごした部屋から二人で同じ仕事に出たんだった。
同じ迎えの車に乗って、ふたり寝癖のまんま半分うとうとしながら運ばれてった。





翔ちゃんは…
正月休みを挟んでも、そのごく短い休みの間に少しゆっくりしたくらいで、


…と言ってもあの人はそんな休みも精力的に動いてたみたいだけど。


休み明けも全力フルスロットルで働いてる。







午前中に5人の仕事があって取材を受けたあと、それぞれ個人の仕事があったりして、
昼過ぎに楽屋を出て別れた。


別れ間際に、「今晩も家で待ってて」なんて耳元でこっそり言われて、
言われなくても待ってるつもりで朝出た翔ちゃんの家に戻ってきた。



なんとなく、部屋を片付けてみたりして。
昨夜汚したシーツも引っぺがして洗濯機に放り込む。

回り始める洗濯機を確認して、リビングのソファーに寝転んだ。





キッチンからは、さっき作った料理のいい匂いがしてる。
気まぐれに…普段はあまりしない料理なんかしてみた自分が、なんだか恥ずかしくて。
なんか…もぞもぞする。


しばらくは気恥ずかしい思いで匂いを感じてたけど、じきに気にならなくなって、手の中のゲームに集中していった。