今日も講義室に座るあいつの横顔を見てた。
目を閉じて、斜め40度から見たあいつの横顔を目の裏に映し出す。
透き通るような白い肌に、すっと伸びた鼻筋。
薄めの唇は少し開いていることが多くて。
長めの前髪から見える、潤んだ瞳。
今日は、尖った顎にほくろがあるのを見つけた。
友達に誘われた合コンで、急遽出た欠員補充であいつがやってきたのが、初めて接した時だった。
それまでは同じ大学とはいえ全然接点がなくて。
その時初めてあいつの存在を知ったくらいだったけど、
騒がしい居酒屋の座敷の中でも、どこか寂しげな雰囲気を感じて、
なんとなく気になり始めたんだった。
俺が友達とワイワイ話しながら構内を歩くとき、たまにあいつとすれ違うと、
俯きがちに歩く猫背をなんとなく目で追うようになっていた。
いつも見かける時間に講義室にいない時は、ちょっとがっかりするくらいには、気になってて。
それでも、特別、話しかけるわけでもなく。
ましてや一緒に飲みに行ったりだとか…そんな機会もなくて。
だから俺は、あいつのことをまだ何にも知らない。
どんなことで笑って、どんな時に泣くのかも…
何が好きで何が苦手か、あいつを取り巻くいろんなものを、知りたいって。
あの飴色の瞳が見つめる先を、知りたい。
そんなふうに考えてたら、なんだか目が冴えてきて、
俺は仕方なくベッドから出た。
キッチンでミネラルウォーターをペットボトルのまま飲む。
なんだかさっきよりも外の風が強くなったのか、窓がギシギシと鳴いていた。
ベランダにつながる掃き出し窓にかかるカーテンを細く開けて外を覗いて、俺は言葉をなくした。
「雪だ……」
暗闇の中にはらはらと白い粒が舞っては、消えていく。
窓の下に見える歩道に吸い込まれるように落ちては消える雪が、街灯に照らされて寒さに凍える誰かの自転車をキラキラと光らせていた。
アイツ、この雪見てるかな…。
もう寝てるかも。いや、夜中までゲームしてるっていう噂を聞いたことがあったから、きっと起きてる。
もしも連絡先を知っていたなら、
誰よりも先に、この雪を伝えたいのは……
一緒にこの雪を見たいのは。
思わずついたため息が、窓ガラスを曇らせた。
明日、構内で出会ったら、勇気を出して話しかけてみよう。
このまま、遠くから見ているだけじゃ、いやだ。
横顔だけじゃなくて、正面から、俺のことを見て欲しい。
窓の外に舞う雪を見ながら、心から思った。
おしまい。
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潤くんのモノローグだけの冬の風景です。
槇原敬之さんの名曲『北風』を聞いていて、
そのまんま書いたものです。
わかりやすくキーワードが散りばめられております。笑
これが、1番の歌詞で、
2番をニノちゃん目線で書こうと思いつつ書きかけて放置しているという、相変わらずの熟成スタイルです。笑
今年の冬こそ書こうかしら。
お読みいただき、ありがとうございました。