言われるがままそこに座る。と、カズは俺の胸に飛び込むように抱きついてきた。
「わっ、待て待て、零れるから!」
慌てて缶をそばのローテーブルに置く。
「どうした?急に」
「んー、なんかさ…」
「なに?」
「なんか、テレビ見てたらさ…翔ちゃんにくっつきたくなった」
そんなことを言って、ぎゅーっと抱きついて。
ぐりぐりと俺の胸におでこを当ててくる。
めちゃ、かわいい…。
「テレビの中の翔ちゃんみてたら、なんか、たまんなくなった」
「どういうこと?」
「翔ちゃん、恋してる顔…してた」
ドキッ、と胸が鳴る。
隠してたつもりだった。
誰にもばれてないつもりだったのに。
いや、あの頃は全然届かなかったのに…
「ずっとじゃなくて、時々…だけど、そんな目をするからさ…」
俺の背中に回したカズの手がTシャツをぎゅっとにぎって、
「翔ちゃんは…俺のなのに」
って。胸に顔を埋めながらモゴモゴと呟いた。
だから…もっと強く、抱きしめる。
抱きしめながら、思う。
わっかい頃の俺、聞いたか?
おまえの気持ち、届いたぞ。
諦めなくて…消さなくて、良かったな。
胸いっぱいに、抱きしめたカズの匂いを嗅ぎながら、思った。
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