「ニーノ」


「……俺は、子ども、産めないから……」




消えそうなくらいちっちゃい声で、ごめん、なんて言うから、その目を覗き込んで、オレはおでこをコツンとニノとぶつけた。




「オレさ…サイテーかもしんないけどさ。夢の中でニノが病院で運ばれていったとき、正直赤ちゃんのことなんて全然考えてなかった。

ニノが、無事でありますようにって…ニノを助けてください、って、そればっかりでさ。

オレは、ニノがいたらいいの。ニノと一緒にいられたら、それでいいんだよ」



そのまま、ニノの、潤んだ瞳をじっと見つめた。
薄茶色の綺麗な目…。
オレの大好きな…。



それから、そっとその唇に自分の唇を重ねた。





目のふちを真っ赤に染めたニノが、すっごく可愛くて、その目のふちにもキス。



両手で、ニノの頬をつつんで、
そして、もう一度唇に…。




「大好きだよ、ニノ」


「……知ってる」





唇を離してニコッと微笑みかけたら、ニノも照れたように笑った。







「ぶっ倒れた人が心配だから、優しいニノちゃんは泊まってってあげましょうかね!」


「え!いいの?明日早いんじゃないの?」


「ここに迎えにきてもらうから、いい。あー、優しいなー。俺」




そうと決まったら飲んじゃおー、なんて、ビールを取りに足早にキッチンへ逃げてった。
照れてる。





可愛すぎる恋人を追いかけて、オレも2本目を開けた。








「あー、でもさー、ちょっと見たかったな、オレたちの赤ちゃん!」

「まだ言ってんの?」

「だって絶対かわいいよね、オレとニノの子だもん!」

「あんたねー……」

「どっちに似てたかな?どっちに似ても可愛いだろうな!男の子かな、女の子かな」

「何言ってんのよ…」

「あっ、もしかしたら本当になるかもよ?これから子作りしちゃう?」

「バーカ!」







不思議な夢の続きは夢のままでいいや。


耳を真っ赤にして照れるオレのいちばんの宝物をぎゅっと腕に抱いて、
幸せを噛みしめた。











(おしまい)












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暑い夏に煮えたぎった頭で考えた、不思議シリーズです。笑


ときどき、あんまりあの子が可愛すぎて、いや、もしかしたらデキてもおかしくないんじゃないか?とか思うことも…←

それでいてめちゃくちゃ男らしくて、そんなギャップが好きなんですよねぇ…。






お読みいただき、ありがとうございました!