*ちょっと特殊な設定に入るので、読んでいて、あ!これむり!と思われたらそっと画面を閉じて、今見たことを忘れていただければと思います。

よろしくお願いします。











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(side A)



自宅に向かう、送迎車の中。
マネージャーの運転に身を任せて後部座席でくつろぎながら、ふと窓の外を見れば、
高い高い青空に、秋の訪れを感じる。

今年の夏はすごく暑かった。
暑くて、熱かった。

ありがたいことに仕事がたくさん重なっていたってこともあったし、もちろん気温的にも記録更新って感じで、かなり大変だった、この夏。


少しづつ空気も冷たくなってきたこのごろ。
この夏の、不思議な時間を思い出すんだ。











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「あっついなーーー……」


空を見上げて額の汗を拭う。


いつの間にか開けていた梅雨のあとの空はすっかり夏色で、真っ白な雲が高く、高く伸びている。



この時期の撮影はもちろん初めてではないけれど、それにしても今年の暑さはきつい。
天気予報では連日真夏日を超える数字が並んでいて、なんだか見るだけでしんどくなってくる。



さらに今回のドラマの放送が秋、冬っていうこともあって、衣装も秋冬物で。
去年、同じように夏にドラマ撮影頑張ってた翔ちゃんの大変さを、今更ながらしみじみと感じているところ。





撮影は、さっきからちょっと中断してる。
とはいっても、すぐ再開しそうだからって、涼しい休憩場所まで戻らずに木陰で待つことにしたんだけど、
やっぱり戻ればよかったかな……。



マネージャーの佐野くんが買ってきてくれたスポーツドリンクもすっかりぬるくなっていて、オレは最後の一口を飲み干した。


木陰に腰掛けて、首から下げたタオルで流れる汗を拭う。
突然、すぐ近くから蝉の声がしてきた。
この木にいるのかな……。見上げてみたけど、よくわからない。
必死に夏を生きる蝉の声が、わんわんと響いて……直接頭の中に響いてくるような音に、オレは目を閉じた。













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