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ピンポーンとチャイムが鳴って、ドアを開けると、そこにおーちゃんが立っていた。
「おつかれー」
「どうしたの?さっきなんにも言ってなかったじゃん」
「んー」
特にそれに答えずに、部屋に入ってくる。
キャップを外して頭を軽く振って、洗面所でうがい手洗いをして出てくる。
「なんか食べる?ご飯食べてきた?」
「んにゃ、まだ。なんかある?」
「オレも今から食うとこだから、簡単なので良かったら」
そんなことを言ってキッチンに入る。
なんか、新婚さんみたいな会話、なんてちょっと思って、
そんなこと思う自分に苦笑した。
簡単にチャーハンと、冷凍してた餃子を焼いて、たまごとほうれん草でスープを作る。
おーちゃんは今日もうまそうに食べてくれた。
食べ終わった食器をキッチンまで運んでくれて、食洗機に入れるとこまでやってくれて、
お風呂に交代で入って…それからベッドへ。
いつもの流れだ。
ベッドの端に腰掛けると、寝転んで待っていたおーちゃんがからだを起こす。
横まで来て、肩を抱いて…そっと、オレを横たえた。
おーちゃんの細くて長い、節ばった指がオレのからだを撫でる。
チュッ、チュッと音を立てながらいろんなところにキスをして…
そう、唇以外…。
首筋にキスをしてからオレの顔を見たおーちゃんが、ギョッとして固まったのがわかった。
「どした…?あいばちゃん」
手で、オレの頬をぬぐう。
その仕草でオレははじめて、知らない間に、涙を流していたことに気づいた。