俺が高2で、潤は中3。
俺のあとを追うようにして潤も、同じ高校を受験して、春からは同じ高校に通うようになる。
とは言っても、重なるのは1年だけだけど。



受験生だった潤にたまに勉強を教えたりしてたけど、さすがにここ数ヶ月は受験に集中してた。
その受験が一段落した頃からまた、こいつは俺んちに入り浸るようになって。
一緒に勉強したり、お互いに好きな事して過ごしたり。




そんなふうに過ごしていての、今日。つーか、今、さっき。

読んでいた雑誌から顔を上げて潤が言ったんだ。





「翔くん、キス…したことある?」

って!











「どうなの?翔くん」

「何だよ急に…。ていうかお前はどうなんだよ。前から結構モテてんじゃん」

「俺は……。無いよ。
だって、俺、ずっと片想い中だもん」




意外だった。
ちょっと俯いて、自嘲するように笑った潤が、なんだか大人びていて。




ついこの間までは、俺よりちっこくて子犬みたいだったのに、
最近は背も伸び始めて、気がつけば俺と同じくらい……。認めたくはないが、微妙に抜かれたかも……ってくらい。










キス、か。

中学の頃、その反抗期の頃。
先輩の彼女だったそのひとに、されたのがいわゆるファーストキス。



「翔くん、キス、した事ある?」



って。まさに今の潤と同じ質問されて。
固まってた俺の唇に、気づけばそのひとの唇が重なってた。


柔らかくて、あったかくて、なんか……ヌルってして。

初めてのキスはレモンの味…なんかじゃなくて、口紅の変な味だった。





「したこと、あるんだね」

無意識に唇を指で触ってたのを潤はじっと見て、言った。



「まあ、な。そりゃ、あるだろ普通に」


動揺したのを見透かされないように、気をつけて、精一杯の余裕顔で言う。




「そっか……、そうだよね」



そう言って、潤は俯いた。
俯いて、しばらく躊躇って。





「俺に……教えてくれない?キス」










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