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「だから、そんなことその流れの中で言われたら、俺が転勤だって思うじゃん!」
「いや、だけど転勤なんてひとっことも言ってないだろぉ?」
カズが乱暴にジョッキをテーブルに下ろすから、飛沫がはねてこぼれた。
「こぼすなよぉ」って言いつつ、でも顔は笑ったままの大野さんが、畳んだオシボリでこぼれたところを拭く。
つまり…、
転勤は確かにあった話だけど大阪じゃなくて、しかも他の人の話で、
カズには、大阪へ出張に行って欲しい、って話だった、ってわけ。
単なる、カズの勘違い、ってオチ。
「あんな神妙な顔で言うから、てっきり……」
「だって出張って言っても、2週間だよ?そんな長い間、ニノの顔見られないなんて、おれ、さみしーもん」
「はあ?!」
俺とカズの声が重なった。
「ほんっとオジサンはさ、そんなことばっかり言って」
「だって本音だもん」
そんなふうに言うのをハイハイ、とあしらって、カズはちらりと大野さんを一瞥した。
その顔がほんとうにうんざりしているように見えて…でも本音ではちょっと嬉しそうにも見えて。
そんなことを思いながら見ていたら、立ち上がった相葉くんが俺の眉間を人差し指でつついて、「シワ、よってるよ?」と笑った。
咄嗟に手のひらで眉間を擦ると、くしゃっと目尻を下げて笑う。
「おーちゃんも冗談は冗談ぽく言わないと!真面目な潤ちゃんが怒ってるよ!」
「いや、別に怒ってなんかないし」
って、言い方がいかにもヤキモチ焼いて拗ねてます、て感じになったような気がして、余計に凹んだ。