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「ふーざーけーんなよーーー!!!」





あれから数日後。


俺の店にカズの、甲高い声が響いた。


その前で、眉を下げる小柄な男がひとり。



「ごめんごめん、おれの言い方が悪かった!」

「俺がどんな思いでこの数日…!」



悪かった、と言いながらあんまりそうは思っていなさそうな顔だ。
それに対してカズは、ぷんぷんと怒りながらテーブルに対して横向きに座って、ぐっとビールのジョッキをあおった。
隣に座っているその男に背を向けるようにして、ぷはっと息をもらした。



「まあまあ、良かったじゃん、結果的にはさ」



カズの斜向かいに座った翔さんもそう言って、ジョッキを傾ける。



「だよね、良かったじゃんニノ。潤ちゃんと離れなくていいんだからー。」

カズの前、翔さんの隣には、長い手足をもてあますように座る翔さんのパートナー。
うひゃひゃ、と耳に残る笑い方をしながら、手についたピザの粉をテーブルの上でパラパラと払った。





追加の皿を運んだ俺に、「ねっ、潤ちゃん!」とニコッと笑いかける相葉くんに、俺も笑顔を返す。









カズの大阪転勤の話……
結論から言うと、カズの転勤は無かった。



カズの上司。カズの隣に今座ってる男。大野さん。と、
カズの話をつなぎ合わせると、こうだ。







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カズがその日、上司である大野さんのところに行くと、
何やら神妙な顔で電話をしていた。


聞くつもりもなく聞こえてくる声に、欠員、転勤、大阪、なんて単語が交じる。


程なくして電話を終えた大野さんが、カズの顔を見て少し眉を下げた。



そして、
「ニノ、ちょっと大阪に行ってもらいたいんだ、あとで詳細は伝えるから」

と言った。




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