ちゃんとは聞いてないけど。
きっとふたりは、付き合ってた。
過去形なのは、今、翔さんにはパートナーがいるから。
俺の勤める店に、そのパートナーと翔さんは度々食事に来てくれる。
翔さんが、今はその相手に夢中だってことも、よくわかってるから、心配することないって…頭ではわかっていても。
やっぱり…気になる。
そんな態度が透けて見えていたのか、翔さんは俺が着くと慌てたように状況説明し始めた。
しばらくは普通に飲んでたのに、今日は異常にカズのピッチが早くて、
気がついたら真っ赤になってたって。
斜めになってゆらゆらしてたと思ったら、じゅんにでんわするーって言ってダイヤルして、そのまま寝ちゃったから、仕方なく翔さんが俺を呼んだって言ってた。
「お前も忙しいのはわかるけどさ、もうちょっと相手してやったほうがいいぞ。こいつ、こう見えて寂しがりやだからさ」
なんて言われて、お互いの忙しさから最近なかなか会えてなかったことに気づく。
だから今日は俺、待ってたのに…なんて思っても、
ちゃんと言わなかったのも俺で。
サプライズ、してやりたかったっていう気持ちが、裏目に出たっていうか……。
カズは、そういう事言わないから…逢いたいとか、好きだ、とか。
ていうか、なんか…翔さんの、『俺はカズのこと、わかってるから』みたいな言い方にもなんとなくイラッとして。
「わかってるよ」なんて…ぶっきらぼうな言い方になっちゃって、そんなちっちゃい自分にも苛立つ。
そんな俺の態度にも気にした素振りも見せず、
「じゃ、あとはよろしく」
って、翔さんは帰っていった。