なのに、なのに、なのに!!
なんだってんだよ!
好きだなんて言ってみたり、俺のことじーっと見つめてみたり、ベタベタと話しかけてみたり、
もしかしたら、これって冗談なんかじゃなくて、
もしかしたら、大野さん、本気で…?
そんなふうに思ってたのに!
ばっかじゃないの?!
こういう時にいくとこがある。
ビルとビルの隙間にある、非常階段の踊り場みたいなとこ。
ここは、ほかのビルからも見えないし、めったに人も来ないから穴場なんだって、昔ジュニアのころに先輩に教えてもらったんだ。
理不尽なことがあった時、悔しくて人に会いたくない時。
そんなときよくここに忍び込んでたっけ。
俺は久しぶりにそこに行って。
しゃがみこんでため息をついた。
1人で盛り上がって、1人で落ち込んで、腹が立って。
ばっかみたい。
なんだか、悔しくて。鼻がツン、と痛くなる。
頭を抱えるようにして、うずくまった。
と、その視線の先に、つま先が見えた。
「みーつけた」
「大野さん……」
「にの、足はえーな」
そう言って笑って、大野さんは俺の隣に座った。
「なんで、ここ……」
「あのねえ、おれのほうが先輩なんだからな?
この場所アイツに教えたの、おれだから」
ちょっと顎を出してするドヤ顔。その顔に、つられて笑顔になりかけるのを、隠す。
顔、見られたくなくて、しゃがんだ膝に顔を埋めた。
「かず」
そんな俺の頭を、ポンポンと撫でて、大野さんは、すっごい優しい声で俺の名前を呼んだ。
「なんで下の名前…。」
「だっておれ、かずのこと、好きなんだもん」
けろっとそんなこと、言うから。
止めらんなかった。