いつになく真剣で、強引なおーちゃんに、オレは、驚いて……。
その場に、立ち尽くしていた。
「遠距離恋愛なんて、上手くいかねーんだよ。やっぱり距離は、壁になる。相葉ちゃんがさみしい時に、すぐ来れないなんて、そんなん、恋人の意味、なくないか?」
気がつけば、おーちゃんはオレのすぐ前に立っていて。
その、真剣な眼差しが、目の前に、あった。
「おーちゃん……」
「相葉ちゃん、おれに、しときなよ」
いつもは、少し高めのおーちゃんの声が、低く響く。
のんびりとした雰囲気の普段のおーちゃんとは、別人みたいに感じる動きで、オレの手首を握った。
小柄な体からは考えられないほどの強さで。熱さで。
「おーちゃ……」
ぐっと手首を引かれて、オレは咄嗟に目を閉じた。
その時。ドアベルが鳴る。
「お前、何やってんだよ!」
ドアを開けて、風のように飛び込んできて。
おーちゃんの肩を掴んで、オレから引き剥がした。
「翔ちゃん!」
「俺の雅紀に気安く触んじゃねーよ!」
ドンッ、と突き飛ばされて、おーちゃんは壁にぶつかった。
「ちょっと、やめて翔ちゃん!おーちゃん、大丈夫?!」
「いくら智くんでもなあ、許さねーからな!」
慌てるオレと、憤慨する翔ちゃんを見て、おーちゃんは、ふふふ、と笑った。
「遅いよしょーくん。もう今日終わっちゃうよ?」
いてて、と肩を擦りながら、立ち上がる。
「もう少し遅かったら、おれが貰っちゃうとこだったんだからな?」
「智くん……」
「相葉ちゃんも、隙、ありすぎ。もっと自覚した方がいいんじゃないか?
ま、いいや。おれ、もう帰るから。ごゆっくりー。」
まるでさっきの事が夢だったみたいに、いつもの感じに戻ったおーちゃんは、
呆然とするオレと翔ちゃんを置いて、カウンターにお金を置くと、手をあげて帰っていった。
「おーちゃん……」
あれは、本気なの?それとも、からかっただけ?
わからないで立ち尽くすオレを、翔ちゃんがぎゅっと抱き締めた。